〜可憐ゾクッ!2〜 (マーガレットの花びらを1枚1枚ちぎりながら)好き、嫌い、好き、嫌い、好き、嫌い……、好き。 やったあ! やっぱりマイジョちゃんはオレのことが! …………。 な、何を考えてるのよ私ったら!! 私のことをあんなに馬鹿にしたマイジョちゃんなんか、もう顔も見たくないわよ!! 本当なんだから! 冗談じゃないわっ!! あっ、見て、アネモネの花よ。奇麗ね……。アネモネの花言葉は、「はかない恋」。どうして? どうしてこんなに綺麗な花なのに、そんなに切ない花言葉なの? どうして……どうして涙がでてくるの? 私は、幸せなのに。 はっ!! しまった。ちょっと自分を見失っていた。今喋っていたのは本来のオレではなく、オレの第5の人格である明治時代の無垢な女学生、ストロベリーメリージェーンちゃん(18)だ。最近、なんか新しい人格が生まれることが多いなあ。どうやら自分内ベビーブームが起こっているようだ。それならばタイで生まれたパリンヤーくん(オカマ)と嵐の翔(アイドル)とストロベリーメリージェーンちゃん(無垢な女学生)はさしずめ団塊の世代(だんこんの世代)であるから、彼らのことはだんこんとりおと呼ぼうではないか。ムキムキッ。 いや、この際そんなナイスでホットなネーミングのことはさておいて、しかしどうもマイジョちゃんのことがずっと頭から離れないのはなぜだろう。 オレは今日、結局ガラス細工のような壊れやすいハートをマイジョちゃんに乱暴にいじられたことが原因で、「マイジョのバカ〜(号泣)!!」と叫んで村を飛び出し、そのまま泣きながら、涙のしずくを後方に飛ばしながら山道を3時間ほど駆け抜けてメーホーソンに帰って来てしまった。 別に、現地の人間とケンカ別れなんて慣れている。ついさっき会ったばかりの奴と罵り合って、「もしおまえの頭の中に爆弾が仕掛けてあって、オレが起爆装置を持っていたとしたら何の躊躇もせず今この場で爆破スイッチを押すぞコラアッッ!!!」と思い憎しみながら別れを告げたことなど今まで数え切れないほどあった(主にインド近辺で)。こんな国、全部燃えて海に沈めばいいのにと思ったこともあった(主にインドで)。マジで死ねやてめえボケカスがコラアッッ(インドで)!!!!! ……でも、なんだかあのマイジョちゃんやカレン族の女性たちがいるナイソイ村には、どうも不思議な名残惜しさを感じるのだ。なんか、もっと話をしたいなあマイジョちゃんと。でももうツアーは終わっちゃったもんな……。明日は次の町に移動しなきゃ。そんなにゆっくり出来ないもの。あっ、見て! こんな所に真っ赤なカーネーションがあるわ? 奇麗ね……。赤いカーネーションの花言葉は、「愛を信じる」。そうよ。愛っていうのは、信じることなのよ。でもどうして、脆くて小さなカーネーションが、そんなに力強い花言葉を持っているの? どうして? どうして涙がでてくるの? 私は、幸せなのに。(いつの間にかストロベリーメリージェーンちゃんが出て来ていました) ……翌朝。 オレは、昨日と同じツアーに参加し、同じ車に乗りメーホーソンの山の中をカレン族の村に向かって走っていた。 なんかよくわからないが、オレはしばらく悩んだ末、昨夜閉店間際に旅行会社を訪れ今日のツアーに申し込んで高い参加料金を支払ってしまったのである。……ち、違うぞ。決してマイジョちゃんに会いたいからなんかじゃないぞ。そう、昨日、お土産を買い忘れたんだ。絵はがきを後で買おうと思って忘れちゃったから(ハプニングにより村を飛び出して来てしまったので)、それをお求めに行くだけなんだ。 今日のツアー参加者はオレだけでなく、ベルギー人のカップルが一緒である。オレは得意げに昨日もカレン族の村を訪問したことを話し、彼女たちの良さを白人カップルにアピールした。 「もう本当にいい所なんだって。みんな優しいし、民族衣装も麗しいし牧歌的だし……」 「ほほう。それはそれは」 「中でも1番凄いのがマイジョちゃんといって、なんたって彼女は日本語も話せるんだぜ!」 「リアリー? ジャパニーズを?」 「そうなんだ。びっくりだろう。オレの意見だけど、彼女は天才だと思うね。だって観光客と話をしながらで日本語を覚えてしまったんだぜ? それに、村の女の子の中でも飛び抜けてかわいいんだ!」 「なんだかまるで自分の自慢をしているみたいね。それじゃあ、あなたはその女の子に会いたくて今日もツアーに参加しているの?」 「そ、そんなことないよ。マイジョちゃんだけじゃなくて、全体的に村が良いなと思ったからだよ。絶対そうだよ」 「おまえ、その娘に惚れたんだろう??」 「な〜〜にを言ってやがるんだテメーっっ!!! アホッ、アホぬかせ!! 日本男児をからかいやがると、本気で怒るぞ!! ものすごく怒るぞ!!! 夜道は気をつけて歩けよ。月夜ばかりではないぞっ!!!」 「オー(笑)! ソーリーソーリー。すまなかったよ(笑)」 「わかればいいんだよ。オレも真剣に謝っている人間を足蹴にするほど厳しい若者じゃないから。さすがに情は持っているから。平成生まれだからって、ワイドショーなどで話題になっている『キレる若者達』とオレを同じだとは思わないでよ」 「はははっ(笑)。でもそんなに褒めるなんて、よっぽどいい所なんだろうなあ。楽しみになってきた」 「そうでしょっ!!! 楽しみでしょっっ!!! めちゃんこ楽しみになってきたでしょ!!! 早く行きましょっっっ!!!」 さて、そのような具合に2時間ほどはしゃいでいるとナイソイ村の入り口に着いたので、ここからは個別に行動することになった。特に時間は決められていないが、各々で満足するまで村を歩いたらまたこの場に集合だ。オレは車を降りるやいなや、ぴゅーーと走り出し一目散にマイジョちゃんのいる土産物屋へ向かった。 あった。たしかこの店だ。 「だーれだっ! 僕でした〜♪ 結婚したくない男ランキングベスト10の常連の僕です。マイジョちゃん!! また来ちゃったよ! ……あれ? マイジョちゃん??」 ところが、オレが突然来たことを飛び上がって喜ぶはずのマイジョちゃんの姿は見えず、出店はもぬけの殻であった。どこに行ったんだろう。机の引き出しに入っちゃってるのかな? それとも地面に穴を掘って隠れているの? 照れているの? おっ、対面のお店のおばちゃんがカレン族の歌を弾き語っている。(ジェスチャーで)おばちゃん、デジカメで動画を撮って良いですか? ああ、そうですか。よかった。 (動画の最後の続き)「ほら、ここに来て座ったらどう?」 ←英語 「ありがとうおばちゃん。歌上手ですね」 「あら嬉しい。あなた、昨日も見かけたわよね」 「そうなんです。おばちゃんが写っているこの絵はがきを2枚ください」 「はいはいどうぞ。20バーツよ。それで、どうしてまたここに来たの?」 「それは、この村のことが好きになったからです」 「まあそれはよかった。あなたはいい子ね」 「そうなんです。ところで前の店の女の子なんですけど。今日どこかに出かけていますか?」 「ははーん(笑)」 「なんですかその人の心を見透かしたような笑いはっっ!!!」 「気にしない気にしない。あんたみたいにマイジョに会いに来る男は珍しくないんだから」 「えっ! ズガーーーーーーーーン(激しいショック)」 「元気だしなさい。ほら、お店の後ろがマイジョの家だから。訪ねて行ってみたら?」 「いえ〜っ!! 家に行っちゃっていいんスカッ?」 「かまわないわよ」 「はいっ! そうします!! アドバイス頂いた通りにいたします!! ありがとう!! 絵はがきをもう1枚下さい!」 「ありがとね、10バーツよ」 「それじゃあまた!」 「はーい」 オレはリュックに絵はがきを収納するとすぐに、マイジョ出店の脇道から後に回って、裏の家を恐る恐る覗いてみた。開いていたトタンの扉の隙間から顔の上半分だけをそお〜〜っと突き出しながら…………。 あっ!!! 「あら? あなた昨日の……」 ←日本語と英語ミックス 「や、やあ。昨日来た僕です。昨日来たけど、今日も来たんだ」 「そうなの? どうぞ、入って」 「いいの? 実家にお邪魔しちゃって本当にいいの??」 「ほら、ここに座ったら?」 偶然にもすぐ目の前でマイジョちゃんは出勤前のお化粧中であり、そして昨日会ったばかりなのに家まで押し掛けてきて自分を覗いている気持ち悪い男を、部屋に招き入れてくれた。普通こんなことはあり得ないぜ? 招き入れないぜ普通は? ということは……、やっぱり、マーガレットの花びらの恋占いは当たっていたんだ!! オレに惚れたんだろうマイジョちゃん!! 彼女はドリフのツッコミもしくは女子プロレスラーが凶器で使う一斗缶の上に化粧道具と鏡を置き、眉毛を描いて、短い筆の化け物みたいなのでパタパタと顔に色塗りをしている。こうして見ると、女性というのは毎日毎朝図画工作の宿題をしているようで、本当に大変だなと思う。オレも女性の気持ちがわかるように、これからはつけまつげと口紅とファンデーションくらいは毎日付けようかな……。そうして女性の気持ちがわかったら、少しはモテるようになるかもしれないし。 家の中にはテレビやVCDがありなかなか文明化しているが、動力はガソリンで動く発電機だ。これは火気厳禁だな。気を付けないと、オレがいつもの癖でウィンクでもしようものならマイジョちゃんの恋心が激しく燃え上がり、引火して爆発だ。 「ねえ、今日もメーホーソンからはるばるやって来たの?」 「そうです。でもそれがなぜかということは聞かないで」 「作者さんだよね」 「きゃーっ! 名前を覚えていてくれてるなんてっ(涙)!!」 「私、記憶力は自慢なのよ」 「凄い凄い。じゃあ、あれも覚えてる? get used to を日本語でなんていうか」 「……う、うん」 「言ってみて?」 「…………。お、おたトゥ」 「かすってもないけど。『おたトゥ』じゃないよ。『慣れた』でしょ!」 「じゃあ私の名前は覚えてる?」 「当たり前だろマイジョちゃん!!」 「わー」 「マイジョちゃん、や、やっぱりお化粧をすると美人になるね。もちろん元からかわいいけど、もももっとかわいく……」 「ギャ〜〜ハッハッ(爆)!!」 「笑うなっっ!!! 人の話は真剣に聞くもんだっ(涙)!!」 「ごめんなさーい」 「しゃ、写真撮っていいかな」 「もちろんよ。このスケベ!」 「…………。はい、こっち向いて〜。どアップでカシャッ。ほら、見てごらん。デジカメはすぐに画面で確認出来るんだよ」 「いや〜〜っ! カワイゲナイね〜〜っっ!!」 「変な驚き方……。大丈夫だよ、美しく写ってるじゃん! モデルが美人だからだよ!」 「ギャ〜〜ハッハッ(爆)!!」 「…………。ところで、やっぱりその首の輪はずっとつけてるんだね。風呂とかもそのままなの?」 「そうよ。このままでシャワーを浴びて、首は隙間からタオルを突っ込んでぐいぐいと力強く洗うの」 「それは大変だ……。たしか、大人になってから輪を取ると頭を支えられなくて首の骨が折れちゃうんだよね」 「そんなことないわよ。取ろうと思えば取れるから」 「そうなのかいっ!! また噂が独り歩きしてたわけ?」 「そうなのよね。世間ではそうやって言われているらしいけど。首が折れたりはしないわよ。まあ、ちょっとは怖いけれど……。さあ、店を始めなきゃ。一緒に行く?」 「行く。店に一緒に行く」 ←どこまでも迷惑な男 マイジョちゃんにかぶり付いたまま家を出ると、外には彼女のお母さんがいた。ここは親御さんへのあいさつをきちんと済まそうと、平身低頭に口上を述べると、お母さんは「娘をよろしく」とお茶を沸かしてくれ、噛みたばこをご馳走になった。なんだか、彼女達は首はアンバランスだけれどあまりに人間的で優しくていい人たちで、ここには観光に来たはずなのに、「首が長い人たちを見に来た」という当初の目的なんて忘れてしまうんだ。 とはいえ、マイジョちゃんのお母さんは本当に驚異的に首が長すぎるんだよな……。 その後、土産物屋に移動してもお客さんが来ないのをいいことにオレは密着して村いちばんのマイジョちゃんと話を続けた。彼女は昔ミャンマーに住んでいたのだが、10年前にタイに移って来たそうだ。今は軍事政権のミャンマーが民主主義になったら母国に戻って、ミャンマーでアクトレスになるのが夢らしい。 「なれる。きっと君ならなれるさ。だってマイジョちゃんはこんなにかわい……いや、何でもない」 「ありがとう」 「と、ところで、カレン族の皆さんは、恋愛とかは自由なんでしょうか。やっぱり、結婚相手は親が決めてしまうんでしょうか」 「昔はそうだったけど、だんだん変わってきてるわよ。私も、いとこと結婚するように言われたんだけど、断ったわ」 「おおっ!! そうだよね。だってまだ19歳だもんね。平成生まれじゃん。現代っ子だから恋も自由にしたいし、現代っ子だから相手の国籍や年の差も気にならないよね。変態でもいいよね」 「それはどうかなあ?」 「じゃあ今、マイジョちゃんはボーイフレンドはいるの?」 「うん、いるわよ」 「へー、そうなんだ。ズガーーーーーーーーーーーン(なぜか激しいショック)」 「そんな遠くない所にいるの」 「そ、そうなの……。あんまり興味ないなそれ。もう話さないでいいよ(涙)」 「今朝ここに来たのよ」 「なにっ、もう家にまで呼ぶような仲になってるのかっ!!! オレのいない間になんだっっ!!! そんな奴認めた覚えはないっ!!!!」 「彼は日本語を喋るのよ」 「なんだって!!!」 「それで胸に漢字がプリントされている黄色いTシャツを着て、青い長ズボンをはいてるの」 「とんでもねえ野郎だっっ!!!! 日本語を話せて今朝この家に来て青いジーンズに黄色いTシャツで胸に『少林足蹴』のロゴが入っていて…………、ってオレじゃねえかっ!!!! それはオレでしょっ!!!!」 「ギャ〜〜ハッハッ(爆)!!」 「そんな巧みな話術をどこで覚えたんだっ!! 憎たらしいかわいこちゃんめっ!!! からかわれてるのに、なんかちょっと嬉しいぞオレは(涙)!!!」 「その漢字はなに?」 「これは少林サッカーTシャツでね、サッカーと少林拳を融合した新しい競技なんだよ。ほら、頭を丸めた人が何人もカンフーのポーズをとっているでしょう」 「ほんとだ。作者もクンフーは出来るの?」 「もちろん出来るさ。なぜかって? ……だって、愛する女性を守りたいからさっ!!」 「ギャ〜〜ハッハッハッ(爆)!!」 「あんたの笑いのツボがわからんっ!! ここ絶対に笑うとこじゃないでしょうがっ!!! どの辺がおかしいんだよ!!! オレのひ弱そうな見た目にクンフーが似あわなすぎておかしいのかっ!! 完全におちょくってるだろマイジョっっ!!!」 「ギャハハッ(爆)!!」 オレはあまりの怒りで思わずマイジョちゃんの首を絞めたが、彼女の首は金属で覆われており硬すぎてオレは手首を捻挫した。そんなことをしていると、店の前に別のツアー組の白人の初老の夫婦がやってきてマイジョちゃんに話しかけたのである。 「ハロー、ビューティフルガール! ドゥーユーリメンバーアス??」 「まあおじさん! ……えっと、昔会ったことありますよね?」 「ワオ! 覚えててくれたんだ! 私たちは、2年前に旅行でこの村を訪れたんだよ。それで、またヒマができたからキミに会いに来たんだよ!」 「キャ〜! うれしい〜!!」 …………。 もちろんマイジョちゃんはみんなのアイドルであるので、オレは横に押しのけられて彼らの話をじっと聞くことになった。何でも夫婦はアメリカ人で、2年前に話をしたマイジョちゃんをとても気に入り忘れられず、このたび念願叶い再会を果たしにやって来たらしい。やはりこの子は人気者だ……。カリスマ首の長い少女だ……。 もちろん日本語すら覚えてしまったマイジョちゃん、英語は文句なしのぺらぺ〜らだ。しかも隣で聞いていても話す内容がこれまた礼儀正しく相手を立てて誉めて気を使って気持ち良い、才女の中の才女である。 しかし……彼女は、自分たちの言葉も含めて3カ国語を操るエリートなのに、職業は「土産物屋の店員」である。考えてもみたまえ、日本では英語がそれなりに話せるということは立派なスキルであり、TOEIC700点だ英検2級だで大喜びじゃないか。だがこの村にしても他の大抵の国にしても、英語なんてペラペラで当たり前、それを前提としてその先に何があるかが問われてしまうのである。 結局思うことは、どこの国にどんな状態で生まれるかというのはただの運でしかないのに、たとえマイジョちゃんはこの村で過ごすことを幸せに感じているとしても、3カ国語を操る彼女が1枚30円の絵はがきを売っている(しかもほとんど売れない?)というのはなんて不公平なんだろうということだ。 そしてさらによく考えてみると、オレはすんごく長い時間マイジョちゃんと話をしており、一緒に来た運転手やベルギー人カップルのことをすっかり忘れていた。 ……やば〜。 「マイジョちゃん! 名残惜しいけど、僕は帰るね(涙)。このマイジョちゃん仕様の絵はがきと、マイジョちゃんとカレン族合唱団が歌うCDを買って行くから!」 「まあそんなに! 300バーツよ!」 「普段オレは土産物なんて買う習慣は全く無いのに。人間、お気に入りの異性のためならいくらでも金を使えるもんなんだなあ」 「じゃあ作者、日本に帰っても元気でね!」 「君はきっと、オレのことを忘れる。でも楽しかったよ!」 「バイバイー」 さよならマイジョちゃん……。別れは辛いけど、マイジョちゃんの方は全然辛くなさそうだし。それに別れは出会いの始まり。早速マイジョちゃんは新しい旅行者と出会っているじゃない。オレは全然出会わないけど。 まあいいんだ。オレには他に好きな人がいるのだから(そうだったのか)。 対面店のおばちゃんにも挨拶をし、ダッシュで村の入り口に戻るとやはりとっくに運転手とベルギー人は戻っており、タバコの吸い殻の山ができ上がっていた。 「す、すいません遅くなってっ!! すっかり話し込んでしまっていて!!」 「あの子だろ。来る時に話してた?」 「はい、そうです……」 「まあ気にするなって。そんなに待ってないから」 「彼の言う通りよ。気にしないで!」 「ごめんなさい」 「でも、また明日も来るんじゃないのかおまえ(笑)?」 「そうよね(笑)。だいぶ熱を上げてるみたいだもの」 「なんだと〜〜っっ!!! また日本男児をからかってるなあんたらっ!!! 僕は怒るよ!! そんな根も葉もない噂を信じて虚言を振りまくなら断固として怒るよっ!!! あんたらにも、きっと将来可愛い子供が生まれるだろう。でも、外を歩かせる時はせいぜい気をつけろよ!!!」 「オー(笑)! ソーリーソーリー。すまなかったよ(笑)」 「わかればいいんだよ。オレもできれば子供には手をあげたくないから。だって子供は地球の将来を担う宝じゃないか」 「ハハッ(笑)」 ……というわけで、2日間にわたるナイソイ村のカレン族(というかマイジョちゃん)訪問は終わった。思えばマイジョちゃんの土産物屋には、おそらく旅行者が撮ったのであろう額に入った彼女の写真が多種多様たくさん貼られていた。あのかわいさと知的な所と癒し系の雰囲気で、虜になる旅人は多いのであろう。オレは全くもって平気だったけど。てんで惑わされなかったけど。 だが今改めてマイジョちゃんの姿、マイジョちゃんと話した時間、あの時のことを頭に描いてみると、オレはちょっぴり思う。彼女は……、笑いのツボがおかしかったと。 噂のマイジョ、才女ちゃん。いや、噂の才女、マイジョちゃん。の写真の写真。 今日の一冊は、 最悪(残虐)方面での傑作 日本の出来事とはとても思えない 消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫) |