〜可憐ゾクッ!〜 やあみんな。また会ったね。嵐の翔だよ。 僕は、作者の中にいる4番目の人格なのさ。1人目はエロ変態の作者本人、2人目は苦痛を請け負うレイゲン、そして最も新しい3人目、アイドルの部分を担当するのがこの僕、嵐の翔なのさ。 でも、作者がアイドルとしてチヤホヤされるのはだいたい地球が氷河期に入るのと同じ周期だと言われているから、次にこの僕が登場するのは多分あと4万年後ぐらいなのさ。でも4万年後に、必ずまた10分だけモテモテになる時が来る。だからそれまでは希望を持って生きるんだ作者。翔はいつでもキミの中にいるんだ! ただ4万年の長い眠りについているだけなんだ!!! ああ、長い……(号泣)。モテない状態で4万年を過ごすのは辛いです(涙)。誰か、それまで僕を冷凍保存して下さい。そして4万年に1回だけ甦らせてください。 ということで、エロ変態でモテない本来の私はスコータイ遺跡観光を終え、さらに北方のチェンマイにやって来ましたよ。 おっ。なんだキミは。目の周りに何かついてないかい? どれどれ、近寄ってみるか。 かわいそう……。 あなた、きっといたずらっ子が用意した、目をつける部分にインクをたっぷり塗った双眼鏡を覗いてしまったんだね? 「ほらちょっと見てみろよ! 向こうの山に激マブのポメラニアンがいるぜ!」とか言われてどうしても気になって覗いちゃったんでしょう。わかる、悔しいのはわかる。でも、オレは味方だから。オレは決して笑ったりしないから。絶対に馬鹿にしたりしないから。だからそんな恨めしい目でオレを見ないでおくれ。 …………。ぎゃはははっ!! なんだその顔(笑)!! バーカバーカ! そしてチェンマイの宿にはネコの盛り合わせが…… ↓この構図だと、灰色のネコを、体の両側に頭がついている怪奇な茶色ネコがグルっと巻いているように見える。 ちなみにチェンマイでは特に出かけることもなく(何のために来たんだ)、ほとんどの時間を宿のネコを観光して過ごしていた。ある夜、ニャーニャー言う子猫を撮影した動画を部屋でくり返し見ていたら、おそらく鳴き声を聞いてオレが子猫を拉致したと思ったのだろう、親ネコが颯爽と助けに来た。さすが親。 そこで、「これはAVI形式の動画なのです、鳴き声は聞こえますが本物の子猫な訳ではありません」と親を説得しながら一緒にロビーまで帰る途中、ふと窓が開いていた隣の部屋を覗いたら、室内のトイレで全裸で便器に座って歯を磨いている日本人旅行者(男)と目が合った。さすがにあちらさまは「やばい、ここ30年の間で1番恥ずかしいシーンを見られたっ(涙)!!」という驚天動地の表情をしており、オレは動揺してネコと一緒に宿の外まで逃げたのであった。 チェンマイの屋台で売られている虫たち おやつとして買ってみました。いろんな虫の詰め合わせです。 いただきま〜す。……ってこんなもん食えるかっ!!!! まあそんな感じで、チェンマイでは何をしに来たのかわからないまま犬猫と戯れて2日を過ごし(動物が好きな男の人って優しくて誠実で信頼できるってよく言うわよね)、翌日宿をチェックアウトし(本当に何をしに来たんだ)長距離バスで西へ8時間。曲がりくねった山道を窓の開かないエアコンバスで右に左に走り乗客のゲロが乱れ飛び、お互いにかけ合う胃液で体が溶け肋骨が見えてメタルKのようになりながら、ミャンマーとの国境近く、メーホーソンという村まで移動した。このメーホーソンでオレは、山岳民族であるカレン族の村を訪れるツアーに参加することにしたのだ。 さて、1泊して次の日早速そのカレン族の村に出かけるのだが、ツアーと言っても今日は他の参加者がおらず、オレと運転手さんのマンツーマンであった。いやなんだよねこういう外国人と一対一の状況……。なんで犬や猫とは一対一で何時間でもいられるのに、人と一緒だとこんなに面倒くさく感じるんだろうか。もしかしてオレは、人として欠陥があるのだろうか(そうだよ)。いや、でも、外国人と一緒だと面倒くさいけど、日本でたまに家の前を歩いている幼稚園の女の子を部屋に上げて遊ぶ時は、深夜までずっと2人きりでも楽しいんだよな……。女の子が泣き出しても全然面倒くさいとか思わないし。おかしいなぁ。 ※本気にしちゃヤーよ 中央に見えるのはメーホーソンの村 まず、メーホーソンという土地自体がなんとなく大麻の香りが漂う、この地方に現れるウルトラマンは胸にカラータイマーではなくカラー大麻を付けていそうなタイ・ミャンマー国境付近の山の中にあるのだが、さらにそこからRV車で山に入り川を横切ったり覚せい剤の売人を轢き殺したりしながら、いくつもの山を越え数時間を走った所にカレン族の住むナイソイ村がある。 少数民族の村とはいえツアーに組み込まれているということは、ケニアの「観光用マサイ族の村」と同じくかなりみなさん観光慣れしているわけだが、それはそうとカレン族の女性は非常に特徴的な外見をしていることで有名である。彼女たちは、体のある部分が長いのである。 どの部分かわかるだろうか? ……おいおい、オチ○○ンが長いってそれはオレのことだろ!! 今はオレじゃなくて、カレン族の女性の話をしているんだよ。人の話をちゃんと聞けよまったく。ううん違う、足が長いのもカレン族じゃなくてオレだろ。恋人いない歴が常に長いのもオレ。彼女にフラれたらメソメソして立ち直れない期間が異常に長いのもオレのこと。ってほっとけよテメエこの野郎っっ!!!! このおばちゃんはすごく気さくで優しいのである。 おわかりでしょう。彼女たちは子どもの頃から少しずつ首に金色の輪を取り付けて、だんだんその数を増やすことによって首をとーーっても長くしている人たちなのです。 根拠の無い噂によると、この部族の方々は首が長ければ長いほど美しいという思想があるとも言われているそうだ。まあ日本でも歴史を遡れば小太りブヨンちゃんで眉毛がインクの染みみたいなおかめ女性が美人とされた時もあるわけで、美意識というのは地域と時代でさまざまである。多分この村の男性にろくろ首の絵が描かれた掛け軸なんか見せたら、怖がるのではなく逆に大興奮状態だろう。また、ウルトラマンに出て来た怪獣のジャミラなんかは、首が短すぎて(というか首が無い)ここではイジメの対象になってしまうであろう。 この村の男性は畑仕事に出かけているらしく、見かけるのはほとんどが女性だ。だいたいみんな土産物屋の店番をしている。 若い子もいるし。 子供もいる。 学校で勉強中…… これだけ首が長いと、試験中はカンニングもやりやすいだろうな……。どこかの騎士と戦う時も、相手の剣を首で受け止めて叩き折ったり出来そうだ。「ふっふっふ……そんななまくらで私を倒せると思って?」などと言いながら。そして首から取り外した真鍮のリングをソレッ!と投げて、悪者を虜にするのではないだろうか。 しかしこの村はなんとも緩やかで穏やかで、日本人が潜在的に持っている郷愁の心を呼び覚ましてくれるような、温かい雰囲気が漂っている。外見こそ特異な姿をしているが、少し言葉を交わしてみると(みんな英語ペラペラ)店先に座る彼女たちはなんともおしとやかで控え目で親切で、寂しい男はハートを鷲掴みにされてしまう。その上、村のどこかで誰かがギターに乗せて歌うのどかな歌声が、BGMのように漂って特有のほんわかした空気を作っているのだ。 なんとも不思議なことだ。同じ少数民族でも、ケニアのマサイ村では郷愁の心は1センテンスたりとも呼び覚まされなかったのに。マサイ族の人たちは穏やかでもおしとやかでもなく、血なまぐさかったのに。まあマサイ族の場合はおしとやかで控え目に生きていたらライオンに食われアフリカ象になぎ倒されるから仕方ないんだけど。 そんな中、オレが落ち着いて話をし始めたのはこの村いちばんの人気者、マイジョちゃん(19歳)である。タイの山奥に住むカレン族のいち女性である彼女は、なんと日本語で喋ることが出来るのである。ちなみに、口癖は「ナンデヤネン!」だ。 たまに他の国でも見かけるが、彼女もこの村を訪れる日本人観光客と話をしているうちに日本語を覚えてしまったという、天才中の天才だ。それに加えて、彼女の場合はなにしろかわいい。もし彼女を日本に連れて行ったら、ヘリョンやサヘルローズにも負けない知性派外国人タレントとして引っ張りダコになるに違いない。「エロかわいい」や「エロかしこい」というキャッチフレーズが流行っているが、首が長い彼女の場合は「ナガかわいい」である。グラビア界でもダントツで首が長いよ。 ということでオレはナガかわいいマイジョちゃんの隣に座り、スカウト活動を兼ねてスリーサイズなどを尋ねてみることにした。というか、なんかちょっと彼女の目を見ると、胸のあたりが苦しくなるんだよね。どうして? 「あの、マイジョちゃん」 「ねえあなたどこ弁? 東京弁?」 「えっ。強いて言えば東京弁だけど」 「そうよね。ナマってナイもんね」 「はい。……あなた本当に凄いよね。僕は旅先でいろいろな人と話をして来たけど、マイジョちゃんはなんというか、天才だと思うんだ」 「ナンデヤネン!!」 「本当だって!! マイジョちゃんは頭がいいし、そ、それに……、か、かわいいよ……。ポッ」 「ギャ〜〜ハッハッハ(爆)!!」 「笑うところかよっ!!! なんだよっ、人が勇気を出して褒めたのに。わかったぞ。男としてのオレに興味がないから笑ってごまかしてるんだなっ!!!」 「そんなことないよ。あなたもハンサムだよ!」 「ユーアーマイソー!ソー! いつ〜もすぐそばに〜あるっ! ゆず〜れ〜な〜いよ、誰もじゃまでき〜ない♪♪」 (リズムに乗って踊りながら) 「なにそれ?」 「…………。ところで、どうしてこの村の女性は首を長くしているの?」 「それは、トラディション(伝統)だからよ。日本にもあるでしょそういうの?」 「知らん」 「ナンデヤネン!! 自分の国なのに伝統を知らないの?」 「知ってる。伝統知ってる。能と狂言ね。あと東の笑点と、西の吉本新喜劇」 「そう、でも首に輪を巻くのは女性だけなの。男は喉仏があるから付けられないのね」 「でもそんなの巻いてて大変じゃない? 凄く暑いでしょ??」 「誰がフトマキやねん!!」 「そんなこと言ってないよ」 「アラソー。それは、もう get used to ね。get used to は日本語でなんて言うの?」 「慣れた」 「もうナレタの。5歳の時から付けているから。私たちは5歳になったらまず5本のリングをつけて、それから後は自分で好きな時に増やせるのよ」 「マイジョちゃんもまだ増やすのかい?」 「私はもう十分長いからいいわ。3年前にひとつ増やしたんだけど、それで最後にしたの」 「そうだよね。オレもそう思う。だって、マイジョちゃんは今のままで、い、今のマイジョちゃんがいちばん可愛いと思うから……」 「ギャ〜〜ハッハッ(爆)!!」 「ねえちょっと待って。なんでオレが勇気を出してあなたを褒めると爆笑されるわけっ? オレだって一生懸命なんだから(怒)。そしてガラス細工のような壊れやすいハートなんだから」 「キャハハハッ!! キャハッハッハッ(爆)!!」 「ちくしょう! 大人を馬鹿にしやがってっ(涙)!!! ダダダッ……(泣きながら駆け出すオレ)」 「キャハッ! あれ、カエるの……?」 マイジョちゃんにからかわれたオレは、悔し涙を流しながらナイソイ村を走った。不思議そうにオレを見る、カレン族の人たちの目も気にしないで……。でも、どうしてだろう。どうしてマイジョちゃんのことを考えると、胸が苦しくなるんだろう。 続く。 今日の一冊は、男でもグサッッと刺さります 東京タラレバ娘(1) (Kissコミックス) |