〜中国の美しい景色2〜





 桂林からは、一気に北上して中部の都市、武漢へ向かう。どうやって行くかと言うと、深夜バスで12時間ほどだ。まあなんというか、毎回毎回、
いい加減にしろよっっ!!! なんでいつもいつも移動の度にひと晩かかるんだよっ!!! オレがいつまでも大人しく乗ってると思ったら大間違いだぞっ!!! しまいには怒るぞっっ!!!! オレが怒ったらどんなことになるかわかってるのかっっ!!! いいか、オレはなあ、ものすごく怒ったらなぜか泣いちゃうんだぞっっっ(号泣)!!!!

 言っておくが、これだけ国が広いのは、
完全に中国の責任である。オレはもちろん、オレのマイミクの人にも一切責任は無い。中国が一方的に悪いのだから、こうやって頑張って夜通し動いて旅している外国人には特別なサービスくらいつけてほしい。具体的にどういうサービスがいいかっていうのは、それは客に言わせるものじゃねえだろ。そのくらい自分で考えないとおまえ。
 まあどうしても難しいならヒントを与えないでもないけどよ。例えばあれだよ。例えば、
夜とぎ的なサービスとかね。夜とぎ的な。……知ってるんだぜ。北京オリンピックのアシスタントをさせるために、中国全土から美女が集められてたらしいじゃないか。ほら、オリンピック期間が終わったら彼女たちには別の仕事を与えないといけないじゃん。だから、丁度いいじゃねえか。言っとくけどこれはオレのためだけじゃなくて、あくまでお互いのためを考えて提案してるんだからな。ちょっと前に「走行中の佐川急便のトラックの飛脚(ふんどし)を触ると幸せになれる」という噂が流行っただろ? あれって、実は佐川急便だけじゃなくて、走行中のバスの中のオレに触っても同じ効果が出るんだぜ?? 知らなかっただろ。だから、これでお互いさまじゃないか。両方にメリットがあるんだから、ぜひ導入してくれよその夜とぎ的なサービスを。

 なんてことを寝れないまま12時間連続で考えていたら、早朝に武昌汽車站へ到着した。ちなみにこの大都市・武漢は、「武昌」という地区と「漢口」という地区が並び立ち、それぞれの頭文字を取って「武漢」になっている。武昌汽車站と漢口汽車站はあっても、「武漢汽車站」というものは存在しないのがポイントだ。これは「武昌」が「小椋」、「漢口」が「潮田」で、頭文字を取った
「武漢」は「オグシオ」だと考えると理解し易いのではないかと思う。小椋さんと潮田さんはいるが、オグシオさんという人は存在しない。それと同じだ。
 また、「武昌」が「小椋」、「漢口」が「潮田」だとするならば、
「武昌」はどちらかと言うと美人な方、そして「漢口」は可愛い方という区別が出来る。オレはどちらかというと、小椋選手の方が好みだ(潮田さん、ゴメン! 今度デートするから許して!)。 で、自分が今「中華人民共和国で武昌汽車站から漢口汽車站までのシャトルバスに乗っている」と考えると絶望的な気分になるが、小椋選手から潮田選手の胸元へ向けて放たれたバドミントンのシャトル(羽のことね)に運ばれていると考えれば、少しは明るい気分になれるではないか。そうやって強引なイメージ操作でもしないと、中国の旅なんてやってられねえんだよっっ!!!!

 …………。
 なんか、最近あまりにもオレは中国の悪口を言い過ぎているな……。
 みんな、
もしある日突然このホームページが中華人民共和国と中国共産党を絶賛する内容に変わっていたら、オレの身に何かあったと判断し、オレの住所を知っている関係者に連絡を取ってくれ。そして行方不明になっていたら、きっと中国の工作員が関与しているから、日本政府にそのように伝えてくれ。

 でも、話を武漢のことに戻して、考え方を変えるってことは大事だよね。ここは武昌汽車站じゃない。
小椋汽車站なんだ。そうイメージすると、なんだか全てを受け入れられそうな気がして来る。むしろ、愛せる。やっぱり、最近オレには中国への愛が足りなかったんだ。中国への愛さえあれば、どんなことでも受け入れられるはずなんだ。愛を持って接すれば、受け入れられないことなんて無いんだ。
 ということで、リフレッシュするためオレは小椋汽車站の小椋公衆トイレに行くことにした。この公衆トイレには例によってドアがなく、便器も無く、地面に掘られた1本の長い溝の上に仕切り板が並んで一人分のスペースが区切られているだけだ。でも、大丈夫。
愛があればこんなトイレだって受け入れられる。
 この形式のトイレは、
一定時間ごとに上流から水を流して排泄物を一掃するシステムのため、溝の中には他人の出したものがこんもりと貯まっている。それこそアフリカの最果てエチオピアを彷彿とさせる、聖者が人々に「魔界」というものを教えるにはこの光景を見せるのが最も適切だと思われるほどの陰惨な光景だが、もちろん愛があれば受け入れられる。
 なんでも悪いところばかりに目をやってはダメなんだ。
どんどん長所を見て行こうぜっ!!! いいかい、他人の排泄物がこんもりだなんだと細かいことを気にしないで、自分もこの上に出してしまえば、なんだか中国人の皆さんと兄弟になった気分になれるじゃないか!! たとえ本人同士は赤の他人でも、オレたちの排泄物は今日から朋友(パンヤオ)だぜ!!!
 尚、今この時間は全中国の誰もが便意をもよおす朝方である。オレが溝の上に腰を下ろすと、眼下に溜まった新鮮な汚物団からホンワカと、
抵抗力の弱い後期高齢者の方がここに座ったら命を失うのではないかと思われるほどの殺人的な悪臭の生温かい湯気がオレにまとわり付いて来る。ここでの湯気はすなわち排泄物が新鮮な状態で気化した物質なので、見方を変えればオレは見知らぬ中国人のアレを全身パック状態で浴びているわけだが、でも愛があれば大丈夫!! 受け入れる気持ちさえあれば、こんな汚湯気くらいなんのそのっ!! バカヤローーッッ(号泣)!!!!!! 認めんっ!!!! どれだけ中国のGDPが急成長しようと、オレは死んでも中国を先進国とは認めんぞっっっ(涙)!!!!!!!
 オレは流水を受け流すかのように、
例えるならばトキの北斗神拳のように、攻撃に対して力で受け止める「剛」の拳ではなく、相手の勢いをそのまま利用する「柔」の拳を発動して、立ち昇る湯気を右へ左へユラユラかわして頑張った。
 だが……、実体の無い敵ほど手強いものはない。あの悪魔将軍も、「キン肉マン最強のキャラクター」と言われているのは鎧の中が空洞でその
実体が無いことが所以である。悪魔将軍にはバッファローマンの体を一時的に身代わりにさせてキン肉ドライバーを仕掛けることができたが、今回この汚湯気に対して肉体を与えるのは、さすがのバッファローマンも激しく拒むと思われる。そもそも、湯気が実体化してもオレは触りたくない。キン肉ドライバーかけたくないもん他人の排泄物に。ていうかなんでオレが排泄物にプロレス技をかけなきゃいけねーの? なんでそんな話になってんの?? おかしいだろうがっ!!! なんだよ大便にプロレス技って!!! 意味がわかんねえよっ!!!! だいたい大便は崩れ易いんだから、コブラツイストとかスモールパッケージホールドとか複雑な技はかけられねえだろが!!! うまく決まるのはせいぜいフライングボディープレスくらいだよっ!!!!
 というかもうなんでもいいんだけど、
人の物の上にするのが本当にイヤなんだって〜〜っ(号泣)!!! 本当の本当に心から嫌なんだよっっ!!! 本当に嫌なんだよ人の上に出すのがっっっ!!!! 人の物の上に出して、着地する瞬間湿った効果音と共に汚物と汚物がドッキングする姿を見るのが心の底から嫌なんだっっっ!!!!!

 なので結局オレは脱いだズボンをそのまま履いて、すぐさまその場から退避した。我慢出来そうなのでこの際用は足さずにトイレから出ようと決意したが一応手は洗っておこうと、入り口の水道の蛇口をひねるとなぜか断水しているらしくコックが空回りし、水は出なかったが
蛇口にひっついていたなんらかのねちょ〜〜〜んとした透明な汚物が手に付いた。




 
うがあああああああああああああああっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




 もう地獄なんだよ。とにかく毎日が地獄なんだよっっ(号泣)

 手に付いた遊星からの物体ねっちょりをすぐさま洗い流そうとしたが、
断水なのである。水は出ない。もうオレは錯乱状態である。
 ダッシュで売店に走り、片手だけを使って金銭を受け渡しミネラルウォーターを2本買った。そして水道でミネラルウォーターまるまる2本使って必死に手を洗浄する。深夜バスで疲労感と共に初めての街に着いた直後の仕打ちがこれだ。これが旅か? 
これが旅かって聞いてるんだよっっっっ!!!! この世から旅なんて消えろよっ!!!!!

 ああ、くそっ。ああ〜〜〜〜〜っっっ!!!!!!

 とりあえずバスで黄鶴楼ってとこに行った。これ。






 なにこれ? 有名なの? 
べっつにどうでもいいよっっ!!!!

 はいそれで、武漢から長距離バスで「黄山」へ行きます。ちょっとここのところ
精神的に不安定な状態なので、日付を変えて冷静になります。もう忘れましょう。ネチョンの悪魔のことは忘れて、初心に戻ろうじゃありませんか。

 さて!!!!

 「黄山」というのは山の名前でもあるが、その山のふもとの町の名でもある。武漢から黄山へはバスで約10時間(ふざけるな)。

 中国には「五岳」と呼ばれる聖なる山があり、それは泰山、華山、衡山、嵩山、恒山であるのだが、その5つの山よりももっと美しく、「黄山を見れば五岳を見る必要はない」とまで言われているのがこの世界遺産・天下第一の奇山・黄山だ。これはつまり、旅行者にとっては
非常に好都合な山ということになる。だって五岳をひとつずつ回ったら大変な労力がかかるけど、黄山ひとつを観光すればもう他の山には行かなくて済むのだ。誰だって1回で用事が全て済んでしまう方がいいだろう。だからこそ駅前の大型スーパーマーケットが流行り、商店街の肉屋さんや八百屋さんの数はどんどん減ってしまっているのである。
 また、中国では「黄山を見ずして山を語るべからず」という言葉もあり、
ここに登ってしまいさえすれば、これからオレは堂々と山を語ることが出来るというメリットもある。逆に、これを読んでいるあなた達は黄山に登っていないのだから、山を語るのは今日から禁止だ。オレと一緒に飲み会に行っても、オレが山のことを語り出したらあなた方は一切口を挟まずに黙って聞いていなければならない。ただし、拍手だけは可だ。合コンでオレが女性陣に向かって黄山の話をし出しても、同様に他の男子は絶対に話に入って来てはいけない。文句言ったって、あんたらは黄山に登ってないんだからしょうがないだろ!!! 黄山に登りもせずに女の子との語らいを楽しもうなんて、身勝手にも程があるんだよっっっ!!!

 この黄山は桂林と並ぶ山水画の世界で、何しろ雲海が素晴らしいという。
しかし日頃の行いの悪い中国人観光客がどっと押し寄せるため、他の観光地と同じくここも天候条件が非常に良くない。いくらオレが快晴を呼ぶ太陽の申し子、日出ずる処の天子だとはいえ、日没する処のネッチョリ軍団にこれだけ集まられてはさすがに適わない。実際に膨大なネッチョリは雲を呼び雨を降らせ、オレは初日から連続で何日も宿に閉じ込められることになった。彼らに当たるバチのとばっちりを受けるのは不愉快極まりないのだが、しかしオレは辛抱強く待った。
 2日間スルーして到着から3日目、早朝6時に起きて窓を開けて見ると、まだ暗い夜空に星が輝いている。
これは、昨日まで空を覆っていた雲が消えているということだ。よし、今日こそ出陣だ!!


 おお! 山が良く見えるじゃないか!








 食料と水とチョコバーをリュックに詰め、登山用の杖を持って宿を出ると、すぐ近くのホテルに観光バスが停まっていた。あれで山のふもとまで連れてってくれないかな……。ちょっと念の為に聞いてみよ〜っと。
 オレは早速バスに乗り込むと運転手に声をかけた。



「おはよーございます。このバスって、山まで行きますかね?」


「おう、行くよ」


「僕が乗ってもいいんですかねこれ?」


「いいんじゃね? 座れば?」


「やった! ラッキー!!」



 まだ座席はガラガラだったので、オレはお言葉に甘えて適当に窓際の席に座った。それからほんの2、3分後、今度は中国人の団体ツアー客さんがドカーっと乗り込んで来た。あっと言う間に満席だ。
 一通り全員席に着くと、
添乗員らしき女性が乗客の人数を数えはじめた。


 …………(汗)。


 一度数えて
首をかしげ、もう一度数え直すと、彼女は「おかしいアル。1人多いアル」と騒ぎ始めた。……いいじゃんよーそんなの。1人少ないなら問題かも知れんけど、多いんだからいいんじゃないの。昨日の夜にツアー客が子供を産んだと思えば辻褄が合うでしょっっ!!! そんな遠くないんだから数とか気にせずに山まで行けばいいじゃんっ!!!! このバスは団体の貸し切りということは何となくわかってたけど!!! でも運転手さんもいいって言ったんだし1人や2人の違いは大したことじゃないだろっっ!!! 13億人もいるんだぞ中国にはっ!!!! 13億人のうちで1人増えようが減ろうがそんなものは大海の一滴だろっっ!!!!!

 添乗員の女性は、それから一人ずつにツアーの参加証のようなものを提示させ、
どいつがニセモノかということを調べに入った。そして、問題の人間はあっさり特定され、オレは放り出された。

 朝からなんだかなーという無駄な時を過ごし、オレは10分ほど歩いて別の乗り場に行くと、黄山までのチケットを買ってバスを持った。しかしそこにも多くの中国人観光客がおり、
誰もが順番を守る気などなく運営側も順番を守らせる気はさらさら無いらしく、1台バスが来てドアが開く度に乗客が殺到して阿鼻叫喚の醜い争いが始まる。
 あんたら、とりあえず自分の欲望さえ達成すれば、マナーとか人としてのプライドとかそういうのはどうでもいいのかよ。オレはほんと同じ人間として悲しいぞっ!!! もっと諸外国から尊敬されるように、マナーを守っていこうよみんなでっ!!!
 あっ、次のバスだ。
ソリャ〜〜〜〜ッッ(仕方なくオレも殺到)!!!!






 ここが黄山の登山口。ちなみにこの山は日帰りで十分登山が可能だ。なぜなら、ロープウェーがあるから。バスを降りたところから一緒だったほとんどの人たちは、ロープウェー方面に向かい消えて行きオレは取り残された。……さて。オレはどうしよう。
 よし、こういう時は、また自分の内なる声と話をしてみよう。



「内なる声さん。なんかねえ、黄山を楽して登ろうと、ロープウェーに乗る奴らがいるんですよ」


「な〜〜にぃ〜〜〜!? やっちまったなあ!! (モチをつきながら)男は黙って、階段!! 男は黙って、階段!!!」


「やっぱりそうですよねえ……」



 そうだよな。クールポコ、じゃなくて内なる声の言う通り、
男なら階段じゃっ!!! というか、中国人団体の人々と行動を共にしたら話し声がやかましくて観光どころじゃないっつーんだっ!!!!!

 黄山は最高地点で標高1810m。そこまで、舗装されている坂道や階段をひたすら上る。
 登山道に入るとそれこそ人の姿はほとんど無く、たまに売店用の物資を運ぶおじさんがカゴを担いで通るだけ。少しずつ体内で熱気と疲労感が蓄積され、オレは進むたびに重ね着している服を1枚1枚脱いでいった。ああ……、この大自然の中で自分の一糸纏わぬ、生の姿をさらけ出すのは最高よ!! 
いいわ、この開放感!!! って全部脱いだわけじゃないのよ。

 ちなみにこの登山道、途中でいくつも分かれ道がある。舗装されているとはいえ、あまり使用された形跡のない道も多く、そのくせ案内板もたまにしか付いておらず方向を誤ると道に迷う可能性が高い。
 しかしこういう時は、オレが今まで2ヶ月以上も中国を旅して身に付けた経験が物を言うのだ。分かれ道の手前で進行方向に迷った時……、その時は、そう、地面に落ちているツバを探すのだ!!! 業者のオッサンや他の観光客が通る道には、必ず手がかりとしてツバがあるはず。……よし、
あったぞ!! うむ、これは粘度も高いし、まだ新しい。間違いなくこっちの道だ!!! ってキモいんだよテメエっっっ!!!!!
 でも、
実際にこの方法である程度の進路がわかってしまうというのが悲しすぎる(涙)。中国人のツバを頼りに自分の進路を決めるくらいだったら、むしろ遭難した方がマシじゃないか?? ※そんなことはありません

 リュックからパンを出しかじりながらヒーヒー、ヒーコラ、ヒーコラ、バヒンバヒン!!! 足が……
ああ足が……(号泣)、と嘆き、でも結構登って来たぞ。2時間ずっと階段を上りっぱなしだ。












 さすがに毎日歩いているだけあってオレもそれなりに足腰は強くなっていると思うが、これは明日足が死ぬだろうな……。2時間も階段を上り続けることって普通はないぜ? というかまだ先は長い。今日1日でこの何倍の階段を上り下ることになるのか。冗談じゃないぜ……ジェロニモが超人になるために上った試練の階段でさえ、さすがにここまで長くはなかったぜ? って一旦キン肉マンのことは忘れよう。離れようキン肉マンから。最近ちょっと多いからキン肉マンネタ。
 徐々に景色は天下第一の山水画の世界に近づいて来ているが、しかし登れば登るほど道が狭くなる。こんな風な道であり、ちょっとでもヨロめけば簡単に命を失えるのだ。











 さらに上って行くと、こんな丸太橋も。恐くて手擦りに掴まることも出来ない。どう考えたってこれ丈夫じゃないだろう。ここ最近天気も良くないし。そろそろ湿気で折れるんじゃないか???










 さらに先へ進むと、だらけた奴らが……。




 あんたら疲れるのはわかるけどさあ、
もうちょっと他人の目を意識して休めよ。特に左の女の人、そんな格好で寝るなんてはしたないだろっっ!!!! その体勢をされると思わず後ろから乗っかりたくなるんだから!!! そしたら多分隣の男が怒ってオレと取っ組み合いのケンカになって、どっちかは山から落ちるだろっ!!! そういう先のことまで考えて休憩の体勢を考えろよっ!!! 人の命がかかってる問題だぞ!!!!


 それにしてもこの黄山、山全体にが繁っているのがすごく趣きがある。この和風というか、和風に通じる中華風な景色。



 
この松。この松がいいんだ。
 それにしても、いい天気の日を待った甲斐があった……。「天都峰」という最高地点に命からがら到達すると、雲海と和風(中華風)の山が折り重なってそれこそ天下第一奇山、黄山を見ずして山を語るなかれの絶景、普段暮らしている日本や東京の街並みとは違う次元に思えてくる、素晴らしいパノラマが。








 オレが毎日ずっとパソコンの画面を見詰めている我が杉並区のアパートも地球なら、この黄山も同じ地球。
 天都峰でしばらく景色を眺めた後、今度はまた別方面の頂上を目指すことにした。今いる側は全然人がいないが、これから向かうところはロープウェーの終点近く、全観光客が集中する方面である。とはいえそこに至るまでがまた危ない道で……。
 わずかでもヨロめけば激しく転落する道、いや、道とも言えない細い経路だ。





 さて、ロープウエー近くまで進むと、とにかく人が溢れている。階段を上ろうとすると上から団体客がジャンジャン来るので脇に避けて待っていると、オレのすぐ後ろの別の中国人観光客は「おいさっさと上れ!」と急かしてきやがる。仕方ないので進もうとすると今度は下りて来る団体客が「待ておまえっ!! こんな狭いんだからオレたちが下りるまでそこで待てよ!!!」と文句をつけて来るのだ。もう、
なんなんですか〜いったい(涙)。僕はロープウェーで来たあなたたちと違って疲れてるんですからっ!!! そういう低俗な争いに巻き込まないでよっっ(号泣)!!!!

 だいたい、
なんで天下第一の奇山に観光登山するのにスーツとか着てるんですかあんたら……。山をなめ過ぎじゃないですかっっ!!! ジャージくらい持ってないのっ!!!





 それにしてもとにかく中国人の団体観光客さんというのは他人の感情を推し量る能力が無いのかもしくはわかってて平気で人に迷惑をかけるのか、狭い通路を突然占領して記念撮影を始めるし、狭い通路にツバを吐くしゴミを捨てるし後ろに人がいるのに気にせず立ち止まるし、
誰もが応援団長クラスの大声で喋りまくるし。これじゃあ空も雨降らせたくなるよな……。これ見ちゃったらさすがにバチを与えざるを得ないもん。いくらなんでもここまでのマナー違反に目をつぶることは出来ないもん。オレが空でもそうするね。罰として雨を降らせるね。


いい景色。





 次の頂上「蓮花峰」は、
人が溜まりすぎて身動きが取れん。「しばらくしたら後ろの人と交代する」という発想がキミたちには無いのか。




 オレはアメリカのホ−ムドラマに必須なチョコバーをかじりながら人混みを避けて歩き倒し、光明頂だの飛来石だの獅子峰だの各名所までひたすら歩き、日が沈む頃には
歩き過ぎで足に激痛が走っていた。
 そろそろ、帰ろうか……。山を下りよう。それじゃ、内なる声に……



「あのー、そろそろ下山しますけど。足が痛いからロープウェーで下りていいですよね?」


「な〜〜にぃ〜〜〜!? やっちまったなあ!! (モチをつきながら)男は黙って、転落!! 男は黙って、転落!!!」


「転落は無理だから、階段で……」



 というか、山の上でたくさん歩き過ぎてこの時点で既にロープウェーの最終便は終わっているのであった。
 激痛の足を引きずりながら階段を行く決意をしたのだが、「ふもとのバス停まで
6km(山道の階段を下りながら)」の看板を見た時はさすがにショックと恐怖で一瞬気を失った。もう膝が全く曲がらないというのに……。

 股が痛い。足が前に出て来ない。しかし、景色は凄い……。
 この日は、旅に出てから「最も歩いた1日、最も疲れた1日」であった。




山水画









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