〜激録!ジンバブエ警察24時〜





 大都会新宿の夜は決して眠らない。
 夜のとばりを隠れ蓑に、都会を根城にする獣たちは今夜も休むことを知らない。歌舞伎町の利権をめぐるマフィア達のしのぎ合い、暴力団の抗争。悲鳴と喧噪が新宿の闇を包む。
 だが、この街の平安のために、命を張って戦う一団がいた。
 そう、我らが警視庁警察官新宿署員である!
 彼らはこの街を悪漢から守り秩序を維持するために、毅然とした態度で悪に立ち向かう。時として危険も顧みず我々のために戦う姿は、人々に興奮と感動を呼ぶのであった。

 そして今日はそんな我らが警視庁警察官新宿署員とは全く関係のない、ジンバブエ警察マシンゴセントラルポリスステーションの警察官たちに完全密着。街で起こる残虐な事件、凶悪犯罪の数々を徹底取材する!

 ここマシンゴの街には、メディアに感化され、テレビによって創り上げられた流行を盲目的に追いかける若者が非常に多い。なぜなら、街を行くほぼ全ての若者が、例外なくブームにのっとりガングロなのである。いや、若者どころか、赤ん坊から警察官まで旅行者を除いた全員がガングロである。
 日本と同様に、このブームが過ぎ去った後はおそらく美白ブームがやってくるのだろう。
 想像するだけでなんと恐ろしいことか!



←ガングロ少年達















 ちなみにこの街の近辺にも夜のとばりを隠れ蓑に、勢力争いに興じる獣たちがいる。ただしマシンゴの街が日本と違うところは、彼らは金や利権のために人々を襲うのではなく、
捕食するために人間を襲うというところだ。だが、獣に近い優秀なマシンゴ警察の面々は恐れなどおくびも見せずに、街の平和のために戦い続けるのであった。

 そんな彼らのおかげで、この街の治安は比較的安定していた。国の経済こそ破綻しているものの、人々は皆平和な生活を送っている。やはり犯罪の無い街というものは、たとえ裕福な暮らしでなくとも、笑い声が絶えず、人々の心は自然と満たされるものだ。
 だが、ある日こんな幸せな風景を一転して恐怖のどん底に突き落とす、恐るべき事件が起こるのであった!!

 マシンゴセントラルポリスステーションに一人の青ざめた日本人が訪ねて来たのは、年末も押し迫った12月7日のことであった。



日本人「た、助けてください!!」


警官「どうしたんだ!!さあ、落ち着くんだ!」


日本人「お金を、お金を盗まれたんです!!」


警官「なんだって!!!」


日本人「た、助けてください!!あわわわ・・・」



 どうやら少年は旅行者のようだ。旅行を始めたばかりなのに所持金を全て盗まれ、死にそうな顔になっている。早速我々取材班は警官と共に事件現場である宿へと向かった。宿には、恐ろしい女主人と数人の獰猛な従業員の姿があった。



警官「動くな!!これより家宅捜索を行う。ちょっとでも怪しい動きをしたら即逮捕だからな!!」


女主人「なによあんたたち!!令状持ってるの!?」

ズギューン!!

女主人「きゃーっ!!」


警官「これが令状だ。・・・文句はないな。」


女主人「わ、わかったわよ・・・好きにしなっ」


日本人「あわわわ・・・」



 かわいそうに、日本人少年は動転して我を忘れているようだ。
 そんな彼の力になるため、犯人を探し出すためにも警官達は従業員、他の宿泊客の取り調べを行った。だが、なかなか重要な手掛かりは見つからない。
 やや落ち着きを取り戻した少年と宿の女主人とともに、我々は彼の部屋へと向かった。
 ポリス達は日本人の荷物をひっくり返し興味深々に様々な質問をし、部屋の中を捜索して一通り調査を終えた後、突然何かを確信したかのような表情になった。
 その表情の意味するもの、彼が悟ったものとは?
 この恐ろしい事件の真相とは一体!!



警官「おい、キミ。」


日本人「はい。な、何かわかったんですか?」


警官「いや、私にはわからないが、犯人を知っている人がいる。」


日本人「ええっ!!誰ですかそれは??」


警官「グレートジンバブエ遺跡にいる、フォーチュンテラーだ。」


日本人「え?なんですか・・それ・・?」


警官「わからないのか?fortune teller=占い師のことだよ。」


日本人「占い・・・。」


女主人「そうだわ!フォーチュンテラーに聞けばきっと犯人が誰か教えてくれるはずよ!!」


日本人「・・・あのー。」


警官「彼女はジンバブエ一有名で、占った人の運命は全てお見通しなんだ。キミの金を奪った犯人のことも教えてくれるはずだ!」


女主人「そうよそうよ!彼女ならわかるはずよ!!」


日本人「・・・。イヤだ!!占い師なんてきらいだ〜!!」


警官「なんてことを言うんだ!おまえ何か占い師に悪い思い出でもあるのか?でもフォーチュンテラーは大丈夫。きっと真実を教えてくれるぞ!」


日本人「・・・もういい!!!もう誰も信じるもんか!!!!うわ〜〜〜!!」



 なんと我々の制止を振り切った日本人は、泣きながらどこかへ走り去ってしまった。親切にもアドバイスを与えてくれた警官と女主人を置いて、一体彼はどこへ行ったのか。我々取材班は、急いで彼の後を追った。
 異国の地で所持金を全て奪われ、希望を失った今、彼は自暴自棄になって自殺などという愚かなことを考え出すことも考えられる。なんとかそれだけは阻止しなければ。この平和な街で尊い命を自ら絶つようなマネは、絶対にさせてはならない。
 号泣しながらバスに乗って走り去った彼に、我々は数十キロに及ぶ追走劇の末ついに追いつくことができた。彼は、とある古びた小屋の中に駆け込んで行った。
 いけない、早く彼を止めなければ。彼がやけになって過ちを犯す前に!!

 少年が駆け込んだ藁でできた小屋の中。
 なんとそこで我々取材班を待ち受けていたものは!!

























 フォーチュンテラーだ!!




 ・・・。



 よかった!彼はまだ理性を失っていなかったのだ!
 なんだかんだいって、最終的には少年も警官と女主人の助言を受け入れたようだ。
 泣きじゃくりながらフォーチュンテラーに助けを請う少年。
 果たして彼は、フォーチュンテラーの口から真犯人を聞き出すことができるのだろうか?
 そして同時に予告された、彼の今後の旅、将来の運命は?そして互いに好意を持ちながらも強情を張り合い、素直に気持ちを伝えられない吉成と麻子、二人の恋の行方は・・・?

 答えは、フォーチュンテラーが、知るわけねー。








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