〜アジアの超豪華珍品料理フォーー!!!〜





 アンコールワットの町シェムリアップから東へ、カンボジアの首都プノンペンを目指す。バスが目指している。オレは別に目指してない。金を払ってプノンペン行きのバスに乗れば勝手にバスが目指してくれるのだ。
 ただ、腹は減るよねやっぱり。たしかに行列のできるラーメン屋の話題になるといつも「並んでまで食いたいとは思わないなー」と強がるオレだけど、時には幼女のように無邪気であり、時には少女のように繊細で、
時には淑女のような可憐さを見せるオレだけど、あのモナコの王妃グレースケリーといえども1日何も食べなければお腹が空いただろうから、それなら似たような顔のオレだって腹は減る。
 丁度昼の小休止の時間になったらしく、プノンペンを目指すバスは
日本のサービスエリアにタイムふろしきをかけて2000年ほど古くしたような村外れの休憩所に停車した。やっぱりドライバーも腹が減ったのだろうか。グレースケリーでもオレでもないのに、腹が減るなんて生意気だ。誰の許可を取ったんだ。
 それはそうと、あそこの板の上でおばちゃんが売っているのは何だろう。








 ちりめん? ひじき?? 
柳ばし小松屋の糸切昆布???
 とりあえず買ってみよう。衛生面は不合格だが、たまには宮廷料理以外の庶民の食事も味わってみようじゃないか。味がよく染み込んで美味しそうだ。おばさま! 朕にも一人前くれたまえよ!
 さあて、それでは楽しいランチタイム。で、結局これはなんなの? 
新橋玉木屋の細切昆布?? カリッ(ひと口)























 
ちょっと待てオイ。(左下の足の先端だけ食った)



 オレは、
サバイバル中か?? ジャングルで遭難してるんじゃないんだよっっ!! こいつは基本的に食材じゃないだろうがっっっ!!!!
 たしかに見た目はカニなんかに似てないこともないが、「これはカンボジアにいる
珍しい子ガニのから揚げで〜す」と言われてもオレは騙されないぞ。つい最近見たんだから。
 これで引っ張られてる方でしょ。
タマンヌガラにて




 だいたい、この露店には「期間限定発売中」の張り紙も張ってないし、おそらくこれだけの大量の巨大蜘蛛がここで毎日売られているのだろう。ということは、
この近所には山ほどこんなのが生息しているのか。裏山にクモ王国でもあるんだろうか。ひえ〜〜〜〜っ(涙)
 こんなものどんなに腹が減ってたって食えるわけないだろう。だって蜘蛛だぞ蜘蛛!! 足ならまだしも、見ろよあの胴体のプクッとした感じ。あそこかじったら
ブチュッ!ビチュリッ!とか音がして謎の白濁液(蜘蛛液)がにゅるにゅる〜〜〜〜っと出てきそうじゃないか!! もしくは生きている子グモが大量にウジャウジャと這い出して来るかもしれない! ギャル曽根でも残すぞこんなのっっ!!!

 結局昼メシは抜いた。蜘蛛食ってもどうせ吐くだけだしな。もしバスの中でゲロゲローッ!とやって
口からでかい蜘蛛を吐き出したら、もはやエイリアンである。きっとドライバーから通報を受けた軍隊に射殺されることだろう。

これも休憩所にて。最後の方、物売りの少女がオレにビニール袋入りのジュースを売りつけようとする→カメラを向けられて思わずニヤけてしまう→最後にちょっと冷静なフリをしてトボける の図




 6時間で首都のプノンペンへ到着。
 次の日から、久しぶりにシングルルームに泊まったため(なんと20日ぶり)、バンコクの東京堂書店で
大金をはたいて買ったsabraをここぞとばかり読みふける。
 説明しよう。sabra(サブラ)とは、小学館から発売されている伝統ある文芸雑誌であり、世界から貧困を無くすためにはどうすればよいか、各国の食糧自給率の割合とその結果に対する考察、次世代エネルギーの開発などについて
鋭い取材と大胆な記事を掲載している、いやらしいグラビアページなど一切無い硬派な書物なのだ。海外で買うと最新号でない上に値段が2倍くらいするけど、買ってしまったのだ。立ち読みだけのつもりだったんだけど、川村ゆきえの袋とじの中身が気になってどうしようもなくなって、リュックから高額紙幣を取り出す自分をどうしても抑えることが出来なかったんだ。トラベラーズチェックを両替したばかりだったのに(号泣)。
 あっ、ちなみに川村ゆきえというのは、
貧困問題に詳しい新進気鋭の女性アナリストのことです。時々彼女の経済レポートが袋とじになっているんですよ。.

 プノンペンには到着の日から4泊し、まる4日かけて十分にsabraを読み切ったところで
次の町に向かうことにした。
 え? プノンペンにはsabraを読むためだけに来たのかよっって?? ……
そうだよ。そのためだけに来たんだよ。じゃあ逆に聞くけど、他に何があるんだよっっ!!!! sabra以外の何がプノンペンにあると言うんだよテメエっ!!!!

 じゃ
そういうことで。
 再び長距離バスに乗り込み、オレはまた国境を越えた。入国したのは、
ベトナムである。
 ベトナムでの最初の滞在中は、ホーチミンシティだ。旧名はサイゴン。有名な出身俳優は、サイゴン輝彦。
 このホーチミン(サイゴン)はベトナムが南北に分かれていた時の南ベトナムの首都であり、現在でもベトナム随一の都市、経済の中心になっている。
 ところで、マレーシアやタイとは違いカンボジアあたりから市民の乗り物はバイクの割合がものすごく増えている。大きな交差点でもなぜか信号がなく、バイク軍団自転車軍団、時には乗用車が入り交じってもはやぐっちゃぐちゃ。古畑任三郎のオープニングで、「チャチャチャチャチャチャチャチャチャチャ〜♪(テーマ曲)」と画面の上下と左右から直線が伸びてきて交わるシーンがあるが、その古畑のオープニングの直線のような感じで、
誰も止まらずにみんな思い思いに四方から交差点に突撃しているのである。
 しかしベトナム人はそれでいいかもしれないが、旅行者は困る。横断歩道も信号も無い、延々とバイクの列が途切れない交差点を接触なしで渡るには、
ブルーインパルスレベルの高度なすれ違い技術が要求されるのだ。下手をしたら、ブルーインパルスのパイロットを日本からここに連れて来て渡らせても見事に車に轢かれるかもしれない。いわんやオレをや(現代語訳:ましてオレなどは轢かれまくるに決まっています)。
 結局じゃあどうやって渡るかというと、体を犠牲にするのである。初めて渡るときは、誰でも向こう側に行くまでに
3回はバイクに撥ねられる。しかし繰り返しているとそれが2回になり1回になり、そして何度も交差点を渡りダメージが蓄積して重体に陥る頃には、遂に一度も接触をせずに渡ることができるようになるのである。ポイントは、やはり突撃だ。「このバイク、止まってくれるかなあ?」という中途半端な気持ちでは永久に前に進めない。「オレが止まらせる」という気迫で突き進めば、向こうも外国人を撥ねてごたごたに巻き込まれるのはイヤなので、ギリギリのところでスピードを落とすのである。たまにスピードを落とさない奴に撥ねられて死ぬこともあるが、その時は運命だと思って諦めよう。それがベトナムなのだから。

 ここでは旅行者の足となるのもバイクタクシー、すなわちただのバイクの二人乗りである。しかしこのバイクタクシーがまたインド以来久しぶりにしつこくて厄介なのである。
 だいたい大きな道を歩いてると、決まって徐行運転のバイクがトロトロとついて来る。今日もまた然りだ。



「ハロー! また会ったな! 昨日も話した俺だよ!」


「おまえなんか知らん!! その他大勢のバイクタクシーをいちいち覚えてられるかっ!!!」


「失礼なことを言うなっ! バイクタクシーだって一生懸命生きているんだぞ!!」


「失礼なことを言ってすみませんでした」


「今からどこに行くんだ?」


「ベンタイン市場まで。すぐそこだから、あんたの助けは必要ない」


「じゃその後は?」


「まだ決めてないけど、どこまでも歩いて行くからいいよ!!」


「じゃあ、ハッパやるか? ハッパどうだ?」(「ハッパ」などの単語はカタコトの日本語)


「いらん」


「じゃあマッサージ?」


「いいって」


「マッサージいいぞ。オンナ好きかオンナ? オマ○コ?


「うるせ〜よっ!!!」 ←思わず日本語で叫ぶ私


「ウルセーヨーー(笑)!!」 ←カタコトの日本語で真似してくる


「ふざけんなよコラあっっっっ!!! オレは怒ったぞテメエっっっ!!!」


「シーユーアゲイ〜ン!」 ブォォ〜〜ン


「…………」



 くそ〜。
 街角の現地人がこの規模でムカつくのは、まさにインド以来だぜ……。なぜだろう。ベトナムは
中国に近いからだろうか? ……いや、そんなことを言ったらまるで中国の人が良くないみたいじゃないか。それは失礼だ。だって、きっと中国の人達は、自分のことより他人のことを第一に考える、思いやりがあってマナーを守る方々ばっかりだと思うよ。そんな中国とベトナムを一緒にしちゃいけないよ。大人げないよ。立派な大人なのに。
 ここは冷静になろう。冷静になって、メシにしよう。








 ベ〜ト〜ナ〜ム〜、
フォーーーーーーーーーー(両手を高く掲げながら)!!!


 ベトナムに来たからには、やはりフォーを食わないと。歩道にテーブルを並べている屋台で100円程度、万年真夏日のベトナムで汗だくになりながら食べるのだが、生まれて初めてのフォーはこれがまた興奮で絶叫してしまうくらい美味い。
フォーーーーーーーーーー(両手を高く掲げながら)!!!!!
 またベトナムのいい所は、お茶やジュースを注文すると巨大な氷がこれでもかと入っているところである。基本的に、海外では氷入りの飲み物にありつくのは難しい。一般的には、途上国では水道水で氷を作るので旅行者は飲んではいけないとされているが、さすがにオレは
アフリカやアジアで砂利入りごはんを、髪の毛やハエのだし入りスープを、食中毒ウイルス入り定食を何度も食って来た男だ。激しい下痢になり倒れて復活するたびにどんどん胃は強靭になっており(超回復)、氷ごときでは何ともならない(これは本当)。いつもオレが書くことは本当。



「それではおばちゃんお会計を」


「20000ドンだよ」 ←1ドルが15000ドンくらいなので高くない


「あいよ。それでは、さ・よ・な・ら・
フォーーーーーー(両手を高く掲げながら)!!!」


「わわわっ。なにするだ! やめてけろ!」


「フォーーーーーーー(両手を高く掲げながら)!!!!」


「ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ(号泣)!!!!!」




 フッ……、またあたら余計な命を奪ってしまったぜ……。許してくれフォー屋台のおばちゃん……。
 フォーフォー乱れながらまだ人間ポリバケツの異名をとるオレの腹は満足していなかったため、今度は別の食堂に入った。おいおばちゃん。ここのおすすめ料理は何だい? 
金はいくらでもあるから美味いもん持ってきやがれ!!
 そして今日の昼メシ第二弾は、これだ!!













↑カエル料理






 …………。








 
オエ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ



 なんでこれ微妙にカエルってわかる姿で出てきてるの……(涙)。他の料理みたいに何の肉かわからない状態なら食えないこともないのに……。でも、もしかしたら食べるとおいしいのかな。
食わず嫌いなのかもしれないな。カエルも、捕まえて食ってみれば意外とおいしくいただけちゃったりして。ちょっと食べてみよう。 ガブッ
 …………。
 
マズイ……(涙)。見た目がマズイ上に、食べてもマズイ……。期待を裏切らない味ですねこれ(号泣)。これはツライな〜。ゲロゲロッ。なんか気持ち悪い味なんだよ。苦いというか臭いというか。ゲロゲロッ。
 これは申し訳ないが残して帰ろう。急用ができたフリをして……すみませんねゲロゲロッ。また今度別の料理を食べに来ますからおばちゃん。ゲロゲログヮッグヮッ。許して下さいゲーコゲーコ。ぴょ〜んぴょ〜ん(飛び跳ねて食堂から離脱)。
 ……なんか、ただ「ゲロゲロ」と書くだけだと
吐いているのかカエルの鳴き声なのかよくわからないな。ましてやオレの旅行記は吐くシーンが多いからなおさらだ(そんな旅行記読みたくない)。でも今回の場合のゲロゲロは、鳴き声の方だ。オレは今しがたカエル料理に罰当たりな言動があったため、カエルになってしまったのである。
 ただ、憂うことはない。オレはドラクエ派だからあまり良く知らないけど、ファイナルファンタジーにはカエル状態を治療する
「乙女のキッス」というアイテムがあるらしい。では早速乙女のキッスを……乙女どこかにいないかな……。あっ! いた! ちょうど石原さとみちゃんが屋台でフォーを食べてる!!



「さとみちゃん!」


「あら作者さん。フォーーーーー(両手を高く掲げながら)!!! いったいどうしたの?」


「ちょっとキスしてもらっていい?」


「いいわよ。チュッ



 
ボヨヨ〜ン(人間に戻った)
 いやー、助かった。いい所にさとみちゃんがいたもんだ。この偶然、
もしかしてオレたちは赤い糸で結ばれているのでは……。そうだ。そうに違いない。まだ若い二人がそれに気付いていないだけなのよ。

 結局まだそれなりに空腹のまましばらくホーチミン市内を尻を色っぽくフリながら散歩していたのだが、次に見つけた露店では、地元民が集まってプラスチックの椅子に座りゆで卵を食べていた。それだけ人が集まるということはそれはそれは美味しい卵料理なのだろうと判断して、腹のすき間を埋めるためにオレは彼らの輪に入った。



「その評判の卵料理とやらをエリート外国人の僕にも下さい」


「はいよ。8000ドンだよ」


「はいどーも」



 熱いお湯の入った保管用の容器からおばちゃんが取り出したのは、ごく普通の卵と、塩コショウの乗った皿とスプーン。これはいわゆる温泉卵かな? それとも
名古屋チーンコ、もとい名古屋コーチンや烏骨鶏に匹敵する高級な鶏のゆで卵だろうかな?
 オレはスプーンで卵の頭の部分をコンコンとたたき、中から返事がなかったのでそのままペリッと皮をむいてみた。









 おや?












…………。




 
グロい。

 ちょっと待ってくれ。ゆで卵にしてはなんか
余計な模様がいろいろと見えてるんですけど。血管的なものが走ってるんですけど。なんかこれ、卵の段階から若干ヒヨコに近づいていませんか?? なんだか、生きようとしていませんか(涙)?
 テレビで見たことがあるような気がするなこんなの……。ヒナになりかけの卵を茹でたものですかこれは。そうですか。この、
けだものっっっ(号泣)!!!!
 まあ、ちょっと試しに食べてみるか……。
 …………。
 なんか、基本的にはゆで卵なんだけど、腐りかけっていうか。
すごく残酷な味がする。形成されかけの骨とか羽とかが、口の中でパリパリ言うんだって(涙)。引っかかって食べ辛いんだって! 一生懸命成長しようとしている幼い体の骨とか血管を、自分が噛み砕いているのが凄く良くわかるんだって(号泣)!!




























 
なんだかもんのすご〜く食欲が失せるんだよねこのまさに「死体を食べている」としか思えない食べかけの構図……(涙)。殻の裏側には、うねうねビシーッ!と血管が張り付いてるんだよね……。
 これさあ、絶対中のヒナは「おおっ、なんかオレ最近結構、体が出来あがって来たぞ。さすがにここまで卵ごはんにもオムレツにもなってないんだから、もう大丈夫だろ。
もう無事に生まれられるだろオレ。やっぱり受精に成功したからには、ちゃんと陽の光の下に誕生したいよね。1パックいくらで売られる奴らはホント可哀相だなあ。でもオレがおまえらの分まで生きてやっからよ。縁日でピヨピヨ言って、仲むつまじい家族にもらわれて幸せに過ごさせてもらっからよ」と思っていたに決まってるぞ。自分の誕生を確信したその後に思いっきり茹でられるって、それなら最初から牛丼の付け合わせで出される奴の方がまだ余計な期待を持たないからいいんじゃないか? 実際に教壇に立ってしばらく生徒の前で働いてから採用を取り消された大分県の教員みたいなもんだぞこれは。

 期待させといて裏切るほど、残酷なことはないんだよな。つき合い始めてすぐにフラれるほど、悲しいことはないんだよな。それなら最初から、オレを避けてくれれば良かったのに。期待なんて持たせないでくれれば良かったのに。
 …………。
 ……
はっ!!

 ほら、ホーチミンにはバイクが多いでしょう(無理矢理終了)?







今日の一冊は、

私、さくら剛の新刊です。ホラー仕立ての哲学入門書

(推定3000歳の)ゾンビの哲学に救われた僕(底辺)は、クソッタレな世界をもう一度、生きることにした。





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