〜愛の国ガンダーラ〜 リッスンエブリワン。まあ聞いてほしい。グーグルで「H 体験 投稿」などで検索をかけたらこのページが出てきたというただの通りすがりの変質者の方々も、ひとまずパンツを履いて聞いて欲しい。(なんでその単語でこのページが引っかかるかは、この後を読めばわかるよ♪) 実は前回の旅行記あたりから、オレは激しくパワーアップしている。 そうだなあ、アフリカからイランまでのオレがただの作者だったなら、パキスタン以後、これからのオレのことは作者・デッドマンズチェストとでも呼んでもらおうじゃないか。お〜い! 作者・デッドマンズチェスト〜! なんだいバルボッサ? ……そう、今あなたが思わず口にしてしまったその呼び名の通り、大陸を股間にかける、いや股にかける旅の男として海賊のような荒々しい力強さがグンと増しているのだ。 もう少しその力強さの部分を具体的に述べると、つい最近ipodにデジカメにノートパソコンというアウトドアの必須アイテムが、旅のお供に加わったのである。もちろんPCの中には動いたり止まったりのお宝ファイルがいっぱいだ。あちこちから拾って来て自分で編集した、Hな体験投稿集のまとめページもあるよ。っていやいやいや、そんなもの無いっ!! わざわざ興奮する体験談を選んでコピーしてホームページビルダーで1ページにまとめたりしてないよ!! そんなお下品で細かい作業をするわけないだろうがっ!! 自立した大人の女性を目指すこのオレが!! いいか、この際だからよく言っとくけど、オレのことを誤解してもらっては困る。もうそういうのはたいがいにしてもらいたい。 オレは別に海外に来てまで引きこもろうとしているわけではないのだ。そりゃあ、たしかにえっちな体験の投稿集やカリビアンコムでダウンロードしたサンプル動画とかは入ってるよ。それは認める。もちろん入れたのはオレじゃなくて、多分、泥棒がオレの部屋に侵入して勝手にPCに入れて行ったんだろうと思う。きっとオレの非モテぶりに嫉妬した悪い奴がオレに濡れ衣を着せようとしているんだ。それは認めるけど、でもあくまでこのノートパソコンは、ワードとかエクセルとかアクセスを勉強して派遣社員としてのスキルアップを目指すために持って来たのである。やましい気持ちなんてこれっぽっちしかないんだ。これっぽっちもないんだ(訂正)。 ……まあ、スキルアップといってもオレくらいになるとアクセス程度は高校生の時点で既に身近な存在だったけどな。ゆ〜め〜を〜見たいから〜♪ 実は今まで隠していたけれど、このホームページ、そしてこの作者も浅倉大介プロデュースなんです。……え? 知らない? まあほら、ワードエクセルについてはウソだとしても、電卓もついてるから両替する時とか重宝しそうじゃん。電卓代わりに使おうと思って持って来たの。電卓より随分でかいけど。あとはハエとか飛んでる時にノートPCでパンッ!て挟んでつかまえたり、自炊する時には閉じた状態でまな板として使ったり。そういうおばあちゃんの知恵袋的な利用方法もあるんだよ。 え? それのどこが海賊のように荒々しいんだって? 何を言っているんだ。海賊といえばカリビアンだろうが!! オレのPCにはカリビアンコムの動画が入っているって今書いただろう!! 何を見てやがるんだよ!! おまえの目はふし穴かっっ!!! ……冗談はさておき、何に使うのであれ、パソコンを持って旅をしているといえばとりあえず最先端を進んでいるように見えるじゃないか。趣味の欄に「人間観察」と書いておけばとりあえず高尚な人間に見られるような感じがするじゃないか。どちらも同じことだ。宿のロビーなんかでノートPCをカタカタやっていれば、何かちゃんとした用事があって海外に来ているように見えるではないか。 え〜い。 引きこもりと言うなら言え。デッドマンズチェストと呼びたいなら呼べ!! いいよそう呼んでも!! 作者・リローデッドでもいいよ。 しかし誰が何と言おうと、IKKOがどれだけ「どんだけ〜」と言おうと、これらのアイテムは決して旅と無縁なものではないのだ。……IKKOをここで出す必然性があるか無いかとか、そんなことはどうでもいい。だまらっしゃい。きっとIKKOもびっくりするだろうが、デジカメで動画を撮影してPCに保管しmpegに変換してYoutubeにアップすれば、こうして旅行記に動画を埋め込むことが出来るのである。どうだ。WEB旅行記の世界もだいぶ進化しただろう!! まあ素人なのできっちりしたものは撮れてないが、これで臨場感だけでも味わってくれ。 ……はい、ということで言いたいことはこれで終わったので、変質者の人はどうぞもう行ってください。期待通りえっちな体験談のページが見つかるといいですね。オレが持ってるのはあげないよ。仕事の後で疲れてる時も、夜遅くまで眠い目をこすりながら苦労してまとめたんだから。 そんなわけで、現在パキスタンのタキシラという小さな町で、郊外に散らばる遺跡を観光するためこうしてリクシャに乗って移動しているわけだ。 ……。リクシャ。リクシャに乗って。 へえー。リクシャかー。 おがーーっ!!! テメーふざけんなボケえっっっっ!! ……いや、別に取り立てて何か事件があったわけじゃないんですけど。こち亀の本田がバイクに乗ると凶暴になるように、なんかオレもリクシャに乗ると自動的に暴れ出す体質になっちゃったみたいで。とりあえずリクシャがこのおなじみの3輪の姿でのーのーと走る姿を見ると、シティハンターの100tハンマーでめった打ちにして四角く畳んでインダス川に流してやりたい気分になる。どうしたんでしょうかね僕。病気でしょうかね。ああっ、忘れたと思っていた過去のトラウマが……暗黒記憶が……。パキスタンのリクシャに罪は無いのに。 なんか関係ない話ばっかで全然話が進んでないので、気を取り直して遺跡について書こうではないか。といっても、関係ない話を書かなかった回は一度も無いけど(涙)。 コホン(気を取り直した)、パキスタン北部地域には、ガンダーラ遺跡と呼ばれるものが散らばっている。 さすがにこのガンダーラという言葉を聞いたことが無い者はいないだろう。そう。あのガンダーラだ。男塾の面々が天挑五輪大武會で死闘を繰り広げた、巌娜亜羅十六僧(ガンダーラじゅうろくそう)で有名なあのガンダーラだ。巌娜亜羅三宝聖の1人猿宝と雷電の戦いとか、とっても思い出深いよね。 ちなみに、ガンダーラと聞いたら100人中97人はこの巌娜亜羅十六僧をイメージするだろうが、残りの3人は西遊記とゴダイゴの歌を真っ先に思い浮かべると思う。はっきり言ってオレも西遊記の方が先に浮かんだので、貴重なその3人の中の1人ということだ。私はこのように大変な希少価値がある人間ですので、彼女を募集しているこの機会をぜひお見逃しなく。 うーん。ガンダーラというのはタケカワユキヒデが創作した国ではなかったのか。歌詞として語呂がいいので適当に作った架空の国名かと思ってた。本当にあったんだ。なんでも、百科事典0.003冊分の情報が詰め込まれているオレの頭脳によると、ガンダーラというのは紀元前500年から5世紀ごろにかけて1000年以上も存続していた実在の王国だったらしい。このタキシラの町はそのガンダーラ王国の首都であり、何千年も前の仏塔や居住地の跡などが残っているそうだ。 ……おおっ、歴史探訪をテーマにしているこの旅行記にふさわしい内容になってきたぞ。
歴史探訪がテーマだけど、ぼく歴史のことあんまりよく知らないので、見た感じで面白くなきゃいやなの。 わざわざリクシャに乗って来てみたはいいが、2000年も前のものだけあって、居住地といっても石の土台しか残っていない。この石垣から当時の生活の様子を思い浮かべようとしても無理があるというものだ。忍法カニ歩きを忍法と認定するくらい無理があるというものだ。カニカニ言いながら歩くだけで忍法といえるのなら、オレのいとこの子供(4歳)ですら立派な忍者じゃないか。ポテチを食べているオレに「ちょうだ〜い」と寄って来たのを無視したくらいで、すぐ泣いてお母さんに言いつける弱虫のくせに。忍者ならそのくらい我慢しろよ!! オレがいとこに軽蔑の目で見られただろうよ!!! ぜったいお年玉なんかあげないからな。正月はなんだかんだ忙しいことにして連絡がつかなくなるんだからオレは。まだまだオレはお年玉をもらう立場でいたいんだよ!! ※この話はフィクションです ん。誰か来たぞ。アジア特有の濃い顔の人が。顔が濃すぎて遠くからでも良く見える。水をかけて薄めた方がいいんじゃないだろうか。 「カニカニ。ハロー。フェアアーユーフロム」 「出たっ! その『フェアーアーユーフロム』という、無理やり会話を発生させようとする第一声!! インド人そっくりな顔立ち!! 瞳の奥に隠された『マネー』の文字!! 私の目が確かならば、あなたは十中八九、ガンダーラ遺跡に常駐しているガイドですね??」 「ノー!! おまえバカ!! おまえは盲目!! わたしはガイドではない。ガンダーラを見守る遺跡の管理人だ。ちゃんとした公務員なんだぞ。ほら、この身分証明書を見てみろ」 「おおっ。なるほど。これは失礼しました」 2月の寒風の吹きぬける中で石の間に佇むオレに近づいて来たのは、この遺跡を管理しているという40歳くらいの貫禄あるおやじだった。観光地に生息するお約束の未公認ガイドかと思ったのだが、わざとらしく首に下げられていた身分証明書を拝見すると、未公認ガイドでも公認ガイドでもテレビガイドでもなくお役人さんだ。 「おつとめご苦労様です管理人さん。これはあくまでもお世辞ですが、なかなかインタレスティングな遺跡ですね」 「ウオッホン。ではもっともっと君に遺跡のことを知ってもらうために、この私ジキジキにインタレスティングな遺跡の解説をしてあげよう」 「……。どうも私の経験上アジア全域においては、観光地の解説を聞いたらあとでガイド料を請求されて揉め事になる傾向があるんですが、今回はそういうのは大丈夫ですよね」 「バカ言ってるんじゃないよおまえ!! こう見えてもオレは公務員だぞ!! ガイド料なんて取るわけないじゃねえか!!」 「すっ、すいません」 「オレはこの仕事に誇りを持っているんだ。ガイド料は一切いらないから。とはいえ、ガイド料とはまた別の話で、この遺跡を保全するためにキミの気持ちでよいからいくらかドネイション(寄付)を置いていきなさい」 「……」 「あくまでも遺跡の修復のためのドネイションだから。決してオレが懐に入れるわけじゃないから」 「ウソをつけっ!!! その顔とヒゲを見ればわかるんだよ!! 150%の確率で自分の物にしようとしてるだろうっ!!」 「ええっ? そんなことないよ」 「払いません。なんとしても払いませんよ僕は。ちゃんと高いチケット買って来てるんだから。遺跡の維持費は入場料でまかなっているはずです。はっきり言って僕こういう交渉ごとには強いんですよ。こう見えても」 「いいじゃんいいじゃん〜」 「ダメ」 「じゃあわかった。これからオレがいろいろと興味深いことを説明してあげるから、その解説が良いと思ったら、グッドだと思ったらぜひドネイションを払ってくれよ。あくまでもグッドと思ったらでいいから。おまえ次第だから」 「払わないっていうのに」 「良いと思ったらでいいから。逆に良くなかったら払わなくてもいいんだから」 「その言葉に責任持てよコラっ!! よいと思わなかったら絶対払わないからな!!!」 「うん。だから、オレの説明が良いと思ったらいくばくかのお金をちょうだいよ。良いと思ったらちょうだい。お金を」 役人から金の亡者カネゴンへと進化したおっさんは、早速オレを連れて遺跡を周りだした。まあ金の亡者カネゴンに進化したというか、役人という時点である意味既にカネゴンなのかもしれないが。 石の土台の脇を歩きながら、近くに生えていた木の枝を折って、おっさんは説明を始めた。 「この枝はなあ、中に栄養のある液が入っているんだ。どうだ、見てみろ。中に白いのが見えるだろう」 「お。本当だ。何か入ってる。ガンダーラ遺跡とどういう関係があるのか知らないけど。それ飲めるの?」 「そうそう。飲めるんだ。ほら、見てみろ。ちゅぱっちゅぱっ」 「うえ〜〜」 お役人さんは木の枝を半分に折って、これ見よがしに中に入っていた白い汁をチューチューと吸って見せてくれた。 「ちゅーちゅー。うぱー! このように、雨が降らず水が確保できない時期など、昔の人はこの木を飲料として使っていたのだよ。昔の、ガンダーラ時代の人々は」 「おっ。ガンダーラと繋がった。なるほど〜。じゃあその木をたくさん植えておけば、水が無い時も安心だね。たくさんの木を育てること自体に大量の水が必要だと思うけど」 「なんでもケチをつけるのはやめなさい。さあ次に行こうか。ほら、あっち。向こうにも遺跡があるから」 「はーい」 ペッ! ペッ! ん? なんとなく斜め後ろで隠れるように歩いているおっさんの怪しい動きに見てみると、彼はチューチュー吸った木の汁をペッ!ペッ!と地面におもいっきり吐き出していた。 「ちょっとあなた! じゃあ無理して飲むことなかったんじゃないの!!! 別にオレは実演を求めなかったでしょうが!!」 「だって昔の人は飲んでたけど、オレは現代人だから……」 「だから!! それなら説明だけでよかったじゃないのよ!!」 「まあここまでやってるんだからドネーションを……」 「まったくカネカネカネカネさっきから……。頭来た。いちいち見返りを求められるなら、そんな親切いらないもんね。説明も結構。ここからは1人で見物するよ」 「そんなっ! 説明が無ければ、遺跡の面白みも半減しますよ」 「どうせ石ばっかりじゃん! なんだよこんなつまらない遺跡! 寒いし、写真だけひと通り撮ってもう帰るの!!」 「待ってよ〜〜(泣)」 「げへへっ!! あんたが言ったんだからな! 良くなかったら金はいらないって!! 自業自得だよーん。金なんて払わないもんねー。良くなかったもんねー。あはっ。あはははっ!! あはっ! あっ……あおっ……おおっ……あ゙はあっ(号泣)」 ズササーー ……。 おっさんをからかいながら調子に乗って岩場を走っていたオレは、ガンダーラ遺跡につまづいてしばらくガクンガクンとなり、「やばい、ここでコケたらめちゃめちゃバツが悪い」と瞬間的に考え必死で体勢を保とうとしたが、最終的に2足歩行への復帰を果たせずヘッドスライディングの体勢で激しく前のめりに倒れた。 「……」 「オオオオオオオッ!! だいじょうぶですか!! ああ、なんてかわいそうな旅人! あわれな少年!!」 「……(泣)。さむい」 「さあ、私の手につかまって。起きれるかい? 痛くないかい??」 「うう……」 パキスタンのお役人さんに助け起こされてみると、かわいそうな少年(わたし)の手の平は擦りむけシャツもズボンも泥にまみれ茶色くなっていた。悲しい。とっても悲しい(泣)。 「オーマイゴッド! こんなに泥が! 今拭いてあげるからね」 そう言うとおっさんは、肩からさげていたみすぼらしい、黒ずんだタオルを掴み、ペッペッと唾をかけてウェットにしてからオレの体を拭いてくれた。 ……あのー。 汚いんですけど(号泣)。 キレイになっているというより泥に唾がミックスされて、オレの服の上で新しい汚物が出来上がっているような具合だ。毒をもって毒を制しようとしたら、毒と毒の化学反応でより強力な新しい毒が生成されてしまったような状態である(涙)。きっと先ほどガンダーラ遺跡のことを侮辱した祟りなのだろう。だめだよね。つまんないなんて言っちゃあ。一生懸命作ったガンダーラ人の気も知らないで。 「さ〜あ、どうだ。そこそこキレイになっただろう」 「ううう……(涙)」 「じゃあ、約束どおりドネーションを……」 「はい、10ルピー。お金あげるから、もうほっといて!! ワタシのことはほっといてよっ(涙)!!!」 「泣くこたあないじゃないか。まあどうせ金さえもらえば用は無いから放っておくけどさ。言われなくても」 「鬼っ!! あなたは鬼よっ!!!」 その夜は、あまりの寒さにシャワーも浴びれないまま、壁の穴から入ってくる冷たい風にさらされながら寝袋にくるまり震えて過ごすのだった。冷たい空気が、擦りむいた手の傷をぞわぞわと侵食していた。 タキシラの次に向かったのは、はるばるアフガニスタンとの国境近く、タフティ・バーイという遺跡である。ひと山登ったところにある仏教寺院跡、こちらもガンダーラの遺跡なのだが、タキシラと比べると大分保存状態がいい。 オレはここぞとばかりipodのイヤホンを耳に挿し、ゴダイゴのガンダーラを聞きながらこの遺跡の1500年前の姿を思い浮かべた。これこそがまさに旅の醍醐味。 そう、ここに、まだガンダーラ王国が隆盛を誇っていた1500年前、まさにこの場所に堺正章や夏目雅子、西田敏行に岸辺シローが遥かなる何千里の旅を終えて辿り着いたのである。その喜びはいかほどだったのだろう。求めていた経典はここにあったのだろうか? 「そこにゆけば、どんな夢も叶うというよ」とゴダイゴは歌っている。ここで祈れば、ガンダーラはオレの夢も叶えてくれるのだろうか。……いいや、違う。夢は、自分の力で掴むものさ!!(とりあえず言ってみたかっただけ) まあ、そんな理性的なことを言って祈らずにかっこつけて、もし夢が叶うっていう噂が本当だったらめちゃめちゃ後悔するだろうから、念のためいろいろと祈っておいたよ。万が一本当だった時のために。あんな夢こんな夢いっぱいあるけど、ふしぎなポッケで叶えてくれることを願って祈ってみたよ。絶対に叶わないとわかっているものもあるんだけどな……。 でも今は、この景色を心に刻み込もうじゃないか。50年後も思い出せるように。 今日の一冊は、不肖宮嶋、砲撃される 不肖・宮嶋のビビリアン・ナイト 下 (祥伝社黄金文庫) |