〜おおベツレヘムよ〜





 イスラエル入国の翌日、早速エルサレムからバスに乗り、10kmほど南のベツレヘムの街へ向かう。
 このイスラエルのバスというのは、
よく爆発することで有名である(どんなバスだ)。理由はよくわからないが、時々パレスチナ人がユダヤ人の乗るバスに乗り込んで、自分ごと大爆発、バスも乗客も木っ端微塵にするという。ひえ〜〜。
 まったく、なんでそんなひどいことするのさ。話せばわかるんじゃないかしら? 何か言いたいことがあるならば、手紙でも書けばいいのではないかしら? 
わざわざ爆発することないんじゃないかしら?? ボウケンジャーに倒された怪人じゃあるまいし。

 しかしベツレヘムはパレスチナ自治区というところにあり、このバスに関しては乗客のほとんどがパレスチナ人のため安心である。彼らは仲間を殺すことは無いからだ。
ボンバーマンでも乗っていない限りは、このバスが爆発することはないだろう。尚、普通ボンバーマンは爆弾を仕掛けるだけで、自分で爆発することはないんじゃないかという意見もあるが、自ら仕掛けた爆弾に閉じ込められて死んでいくのがボンバーマンの宿命だというのは、ファミコン世代にとっては周知の事実であろう。

 さて、小1時間ほど走ったところ、ターミナルでもないただの道端で、バスが停車し全員が降ろされた。なんだなんだ? 長距離移動にありがちなトイレ休憩か?? それなら、
サービスエリアでじゃがべーくんを食べないと。高速バスの休憩といったらじゃがべーくんでしょうやっぱり。
 乗客が全員狭い坂を上って行くため、オレも
お盆の時期の灯篭のように流されるまま進む。みんなどこに行くんだろうか。この先でじゃがべーくんを売っているのだろうか? いや……それにしては、この一面に張り巡らされた鉄条網はなんだろう? 大日本プロレスかな。

 しばらく進むと、そこに出てきたのは検問所であった。
銃器を持ったイスラエル兵が数人いるだけで、特に彼らはじゃがべーくんやオリジナルソフトクリームなどを販売している様子はなかった。それどころか遠くにいる兵士はこっちに向かってライフルの照準を合わせている。うーむ……。まったく、サービス精神のかけらも無いサービスエリアだ。こんなもの休憩と呼べるかっ!!!
 ここはどうやらパレスチナ自治区との境であるらしく、イスラエル軍が怪しいものはたとえネズミ一匹、
ミトコンドリア1匹たりとも通してなるものかとものものしく通過者をチェックしている。しかもバスはここを通ることができず、乗客はわざわざ別の車に乗り換えなければならないのである。なんでこんな面倒なシステムになっているのだろうか。まったく意味不明である。サッカー応援団のウルトラスニッポンの「リーダー的存在」というポジションの意味くらい不明である。

 さて、ベツレヘム、という街の名前はなんとなく知っている。オレの中では、
有名というほどではないがどこかで聞いたことがあるという、ペパーダイン大学のような位置づけの街である。しかしニートにとってはそんな知名度であっても、全世界20億人のキリスト教徒の方々にとっては、「『ベッ○ム』の○に文字を当てはめて言葉を作りなさい(正解:ベッカム)」という問題が出たら、文字数を無視して「ベッレヘム」と回答してしまうだろうほどの重要な場所なのである。
 さあ、もしこれを読んでいる中にキリスト教徒の人がいたら、
ここから先は読まないでください。



 さて、なぜにベツレヘムの街がそんなに重要なのかというと、それはこの場所があるからだ。今はこのように立派な祭壇になっているが、かつてここは馬小屋であったという。
 そして、まさにこのポイント、2000年前にこの馬小屋で生まれたのが、
立派な馬である。ではなくて、イエスノー枕で有名なイエスキリストである。


 この場所で、今から2000年前にマリアお母さんから処女懐胎でキリストが生まれたのである。

 ……2000年前だぞ?

 2000年……。なんて……
なんて最近なんだ。

 ほんの1週間前に訪れたカイロの考古学博物館には、
3300年前の人物であるラムセス2世の本物のミイラなんかが普通に陳列されているのである。それどころかピラミッドなんて4500年前の建造物だ。2000年前のもうひとつ2000年前、そこからさらに500年も昔に建てられた物で、しかも今でも中に入れちゃうのだ。
 それに比べたらたかが2000年前。西暦0年なんていったら、
もう黒柳徹子がテレビに出始めてた頃じゃないの?? 泉重千代さんなんて、キリストが生まれた時にはもう就職していたに違いない。それにイエスは数々の奇跡を起こしたらしいけど、別に現代でもマリックやセロや前田知洋さんがそういうのは見せてくれるし……。

 だいいち、
処女懐胎ってねえ。マリアは誰とも交わらないまま妊娠したらしいけど、まあ〜奥さんそんなねえ。マリアさん、旦那のヨセフさんが大工仕事してる時、よく派手な化粧して出かけてたっていうし。夕方ごろベンツの助手席に乗って帰ってくるのを八百屋のジョセフィーヌさんが見たらしいわよ。
 尚、エジプト神話では女神イシス、日本では聖徳太子の母親なんかも処女懐胎している。彼女らは何もしていないのに突然妊娠したというが、まあ〜奥さんそんなねえ。イエスちゃんも小学生くらいになったら、
地主のトーマスさんに妙に似ているなんて噂が立つかもしれないわよ。

 ちなみに、新約聖書をチラっと見たところ、イエスの説教の中に「みだらな思いで他人の妻を見る者はだれでも、既に心の中でその女を犯したのである」というものがあった。他人の妻をいやらしい目で見るという行為は、その人妻を
犯すのと同じだというのだ。
 ……ということは、説教の通りだとすれば、このオレは
前科数百犯の超極悪レイプ犯ということになるではないか。少なくとも、この旅の間ですら50犯くらい増えている。
 違う。違うぞ!! オレはただ妄想しているだけなんだ!! 
実行したことなんてないっっ!! そんなチャンスには恵まれていないんだ!! チャンスも与えないなんて不公平だ!! キリストのバカやろー!!!!

 (気を取り直して)この場所は生誕教会といって、1700年ほど前に建てられたものである。この場所からキリスト教が生まれたのだが、しかしそれはいいことだったのだろうか。キリスト教の名の下に、十字軍や南米の先住民狩りから現代に至るまで、とても多くの人たちが虐殺されている。
クリスマス期間中に全世界のモテないオタクたちが溢れる殺意と屈辱感に見舞われるのも、キリストが12月24日に生まれやがったせいである。あんたなんて2月29日に生まれりゃよかったんだよ!!! 惨めな思いは4年に1度で十分だっ(号泣)!!!!

 (気を取り直して)さて、虐殺といえば当時ヘロデというユダヤ人の王がいたのだが、「ベツレヘムで救世主が生まれた」というお告げだかなんだかを聞いたヘロデは、勇者の芽を摘むために
ベツレヘム周辺一帯の赤子を皆殺しにしたらしい。そのかわいそうなえい児たちの墓もこの教会の中にある。
 ほら、もうキリストが生まれた瞬間から
余計な殺戮がおこっているではないか(イエスはエジプトに逃亡)。自分の地位が脅かされるのを怖れたヘロデ王により、この村に住んでいた2歳以下の子供は全員惨殺されてしまったのだ。
 それにしても、イエスの生誕ポイントもえい児の墓も教会の狭い螺旋階段を下りた地下にあるのだが、観光客どころか教会関係者もだ〜れもいない。静まり返った中、1人でイエスとマリアの絵や像が並ぶ祭壇や、虐殺されたえい児の墓なんかを見るのは
尋常でなく怖い。地下のあちこちにえい児の霊が駆け回っていて、マリアの像が突然血の涙を流したりしそうだ。もしかしたらもう殺された赤ん坊たちがオレを囲んでいるのではないだろうか。なんか今、かすかに産声みたいなのが聞こえたような気もするぞ……(涙)



「フェアーアーユーフロム」


「おギャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」



 
おぎゃ!! 止まるっ! 心臓が止まるっ!! 神よ救いたまえっ!!!

 
惨殺されたえい児たちの墓を覗いていたオレに突然後ろから重低音で話しかけたのは、螺旋階段を音も立てずに下りてきた教会の神父風おじさんだった。うわっ、やばい、心拍が下がる!! 心停止するっ!!!! ドンドンドンドン(自ら心臓マッサージ)……スーハースーハー

 
あああああびっくらこいた…………(号泣)。
 今オレ、びっくりしすぎて多分
ソトマイヨールより高く飛び上がってしまったんじゃないだろうか。公式レコードにはならないがアジア記録くらいの跳躍はしたはずだ。そんじょそこらのネコよりも跳んだぞ。
 おじさんはオレに国籍や職業や注目している女優を一通り聞いた後、暇なのか(暇なのだろう)、一緒に教会を回りながら話をしてくれた。生誕教会の歴史やクリスマスに行われるミサのことなど、言葉の壁のせいで
基本的には何を言っているのかわからなかったが、建物を出て中庭を歩いていると、おじさんが教会の壁を指差した。


「ほら、これらを見たまえ。穴が空いているだろう」


「ほんとうだ。小さな穴がたくさん。これはなんでしょう。キツツキの穴かしら? それとも、ブラックマヨネーズみたいに、デコボコを売りにしているのかしら?」


「そうそう。昔のナンチャンもそうだったんだよな。いやそうじゃなくて、これは銃弾の跡だよ。半年前にイスラエルの兵士に占拠されたんだけど、奴らここで銃を乱射してな」


「へー」


「その時は、17人殺されたんだ」


「おうっ!!! 重い……重い話ですねそれ……」


「うん。イスラエルのやることなんてそんなもんだよ。今に始まったことじゃないけどな。ほとんど毎日、どこかでパレスチナ人が殺されてるんだ」


「なんでなんでなんでなんでなんで?? なんでなんでなんで?? なんでなんで?? なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで????」


「それがパレスチナなんだよ。まあ、そういうことで少し寄付金を置いていきなさい」


「出たーーっ!! イエスの名の下にガイド料請求!! キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!! これは神の御心に適っているのでしょうか!!!」


「ちょっとでいいから。これはキミの贖罪(しょくざい=罪滅ぼし)でもあるのだ」


「はい。では金品を積むことにより、過去に犯した前科数百犯の淫らな罪を贖おうと思います。
ってこら!!! オレはイエスなど信じない!!! みだらな思いで他人の妻を見てはいるけど(ほぼ毎日)、そんなの日本の刑法では犯罪にはあたらないんだ!!!」


「では○女の△△に●○した罪とか、※β に
ピー Ω$Я の罪とか、いろいろあるじゃないかおまえ」


「はい
喜んで寄付させていただきます。神よどうかこの罪深き迷える子羊を救いたまえ守りたまえ」


「そうそう。心行くまでざんげをなさい」


「なつかしい……ひょうきん族ですね」


「プロデューサーの横沢です。ではこのお金は教会と貧しい人のために使わせていただきます」


「どうか私の罪を許したまえ」



 神父の横沢プロデューサーに10シュケル(約200円)ほど渡した結果、これでオレもイエスの名の下に一切の罪が許され、キレイな体になったのである。明日からはまた、
1からコツコツと小さな罪を犯していこうと思う。潔白な体になったんだから、ちょっとくらい罪を重ねてもたいして目立たないよね。汚れきったらまた寄付金を払って贖罪すりゃいいと思えば、ある意味これからは罪おかし放題だ。いいなあキリスト教徒は。金を払ってざんげをするだけで罪が許されるなんて。

 生誕教会の周りには他にも観光が出来る教会がたくさんあり、マリアを主体にした教会ではイエスの絵や像もまだ赤ちゃんでバブバブ言っており、一般的にイエスの絵として書かれる
あのヒゲのおっさんと同一人物とは思えないくらい可愛い姿が拝めたりする。もおー、キリストか〜わ〜い〜い〜(体を左右に振りながら)


 イエスが生まれた、ベツレヘムの町



 その後、美人で欲求不満な修道女を探して何軒か教会をハシゴしたが、
どうやら現実はPCのギャルゲーとは違うようで、特に収穫はなかった。そしてオレはまたバスでエルサレムに戻った。

 ベツレヘムにはイエスが誕生した生誕教会があったが、エルサレムにはイエスが十字架に磔(はりつけ)にされた「ゴルゴタの丘」の跡地に立つ、正墳墓教会というのがある。ここはイエスが死んだ場所でもあり、墓でもあるのだ。
 彼は十字架を背負いエルサレムの町を歩き、この場所で両手両足を打ち付けられ、息絶えたのである。


 これは教会の中にある、イエスの墓と言われている祭壇だ。
 しかしもっと注目すべきは、ここは墓でもあり、同時にイエスが
復活を遂げた場所でもあるということなのだ。十字架から降ろされて息絶えた3日後に、ここでイエスは生き返ったというのだ。




 ……。











 
ぶぷっ













 ……いやいや、
笑ってないよ。ちがうって、今笑ったんじゃないって!!! もう、だからちょっと咳だよ、咳しただけだって!!! だーかーもう!! 笑うわけないじゃんよお!!











 
ふっ











 
ちーが笑ってないって!! マージで!! 違うんだよ!!! これは、キリストとか関係なくて、他のことちょっと思い出しただけだって!! 別件バウアーだって!!! そう、イエスじゃなくて、昨日の鶴光の噂のゴールデンアワーの下ネタを思い出しちゃっただけなんだって!!!!

 ははっ。いや、
そうそう。復活したんだよねここで。うん。オレもそう思うよ。だって普通の人間じゃないもんキリストちゃん。救世主と書いてメシアだもん。あり得ると思うよそういうの。決して空想の中だけのことじゃないんだ。実際、プラナリアだって真っ二つにされても死なないんだからさ。ましてやプラナリアどころじゃなくて、救世主と書いてメシアだもん。
 まあ、そういう主張してると多分TVタックルの超常現象スペシャルでは
「2012年に地球が滅亡する」とか「金星人と知り合いだ」とか言ってる人と同じ側の席に座らせられると思うけど、でも肯定派がいてこその超常現象スペシャルなんだから。みんな番組にとっては大事な人たちだよ。ほんとだよ。

 エルサレムの旧市街近郊には他にもマリアの墓や、イエスが12使徒と最後の晩餐を行ったという部屋もある。


 一応この部屋が、ヨハネやヤコブや裏切り者のユダなどと一緒に、イエスが晩餐を囲んだと言われる場所である。
 晩餐の最中にイエスは「この中の1人が私を裏切るだろう」と予言し、その時サタンがユダの体内に入り、キリストを役人に売り渡したのだ。


 うーん……なんか、
最近の旅行記の内容は、妙に教養溢れている気がするなあ。おそらく読んでいる人には、ネットで調べたことをそのまま書いているだけだということはわからないだろうから、ここのところ作者はかなり教養ある人物と思われているのではないだろうか。まあどんどんそう思っていいけど、ただし質問は受け付けないよ。だって、書いている以上の知識は無いから。持ってるもの全て出し切っているから。

 でもいいなあイエスは。ただ夕飯を食べるだけなのに12人もの友達に囲まれて。オレなんてご飯を前に「いただきまーす」って言っても、
誰も応えてくれる人はいないよ? ただテレビの中のタレントたちの声が、7畳間にむなしく響くだけさ。たまに吉野家とか行けば大勢で一緒に長テーブルを囲むけど、みんな他人だから全然話さないし。
 いや、でもオレだって囲まれたことはあるんだ!! 
オフ会をやった時は、12使徒よりたくさん人が来てくれたもんねー!!! ヨハネやヤコブの代わりに、沢野さんとか篠崎さんがいたんだ。乾杯の後はみんなそれぞれに盛り上がってたからオレは隅で見てただけだけど、でも「こんな質問されたらなんて答えようかなー」なんて考えながら、楽しく過ごすことができたさ。実際は話しかけられなくとも。まあどうせオレなんて、「田子の裏ゆ」の「ゆ」と同じで、なんのためにいるのかよくわからない存在だから。いいんだ。

 しかし、イエスの死んだ場所や夕食を取った場所、十字架を背負って辿った道などを見に集まって来るキリスト教徒というのは、つまりは冬のソナタにはまって
ヨン様の生家やユジンとの思い出の地を訪ねるおばさんファンと全く同じことをしているのである。つまり、彼ら彼女らは要するにみんな、熱狂的なキリストファンなのである。ヨンさまファンやヒデキファン、矢沢や猪木信者なんかと並ぶ存在として、キリスト信者がいるのである。

 さて、宿に戻ってみると、他の宿泊客が何やら話しているところに出くわした。なんのことかと聞いてみると、今日ハイファという町で
パレスチナ人による自爆テロがあり、10人が死亡したということだった。
 ……なんか、
この国おかしくないか?? いったい何が起こっているんだ??
 今日1日、ボケーっとしながらごく普通の楽しい観光地めぐりをしていたオレだったが、しかし翌日からはイスラエルという国の真の姿、そして彼らの
自爆の理由を、生々しく見せつけられることになるのだった。


 





今日の一冊は、

犬と子どもが好きな人限定ですが

ことばはいらない




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