THE FIGHT ROUND40
〜デリーが俺を呼んでいる(後編)〜
「ロドリゲス! オレのいない間に随分好き勝手やってきたらしいじゃねえか。どうやら左眼だけじゃ足りなかったようだな」 「作者か……。長かったぞ……10年だ。10年間、この傷が疼くたび、おまえのその憎たらしい、ニヤついた顔に風穴を開けるのをどんなに夢見て来たか」 「フフッ。そんなにオレのことが恋しかったか? だが悪いがオレはおまえのような化け物に興味はないんだ」 「オレの左眼はてめえのせいでただの空洞になっちまった。見えるものはただの暗闇だ。だがな、その無いはずの左眼で……その果てしない暗闇の中に、てめえの姿が浮かんでくるんだ。てめえがオレをあざ笑っている姿がよぉ! 抜けっ!!」 ズギューンッッ!!! 静寂が辺りを包む。 銃を構えたまま動かない2人。 「……」 「……」 「やるじゃねえか」 「ふふふ。10年前とは違うのよ」 「くっ!」 崩れ落ちる作者。地面に膝を付き、ロドリゲスを見上げる。 左肩を押さえるその指の隙間から、鮮血がこぼれ落ちている。 「おどろいたぜ」 「ああ。……だが、てめえもまだ腕は鈍ってなかったようだな」 「フッ。おまえとはくぐってきた修羅場の数が違うからな」 「神よ!! おまえはこのロドリゲスを地上に生まれさせながら、なぜ作者まで生まれさせ……た・・の……か……」 ドサッ 目をカッと見開いたまま、仰向けに倒れるロドリゲス。 口の端から血がひとすじ流れ落ちる。 「ロドリゲス……。その名前、おぼえておくぜ」 「さ、作者さん!」 「作者さ〜ん!!」 「やった! 作者さん!!」 ロドリゲスの弾圧に苦しんでいた民衆が、作者を称えて集まってくる。 「作者さん、ありがとうございます! これで、オレたちもまた元の平和な暮らしに戻ることができます!」 「ああ・・なんとお礼を言えばいいのか……」 「そうだ! 作者さん! これから作者さんがロドリゲスの変わりにここを治めてくれませんか?」 「おお! それはいい考えだ! 作者さんがいてくれれば、恐いものなしだ!」 「そうだそうだ!! それがいい!!」 「お願いします!!!」 民衆は作者を称え、作者にこの地にとどまるよう口々に懇願した。しかし作者は、その願いに応えようとはしなかった。 「……みんな、ありがとう。だが、オレは所詮一匹狼。狼は、ただ次の闘いの場を求めてさまようだけ。ボウズ、強くなれ。強くなってお父さんやお母さんを守るんだぞ!」 「うん。ボクきっと、きっと作者さんのように強い男になってみせるよ!」 「みんな、元気でな。じゃあな!」 テンガロンハットを深々とかぶり、孤独な背中を見せて去って行く作者。 その背中に向かって、少年が叫ぶ。 「作者ー!!カムバーック!!!」 |