THE WAY TO INDIA

〜インドへの道〜



インドは不思議な力で旅行者を呼び寄せるという。


 西暦2002年1月のある日。
 1人のアホが真剣にアフガニスタン行きを考えていた。
 どうやら彼は同時多発テロの後アメリカに行ってきたらしく、「戦争というのは片方の言い分を聞くだけでは本質が見えてこない。アメリカを見た今、次にやらなければいけないことは相手国であるアフガンに行くことだ!」と、とても高尚なことを言っていた。
 彼がアメリカ滞在中ラスベガスのカジノで豪遊したり、 ユニバーサルスタジオで遊んでいたことには目をつむるとして、その考え自体は立派なものだと思う。
 しかしそう簡単にアフガンなど行けるものだろうか?アメリカに行けてアフガンに行けないというのはよくよく考えてみれば不思議な気もするが、アフガンは戦地である。
 彼曰く、「大仁田でさえ行けたんだからオレだって行けるはずだ。大仁田はただの大学生なんだぞ?」ということだ。どうやら雑誌かなにかで、大仁田厚がプロレスのイベントの下見の為カブールに視察に行ったという記事を読んだらしい。まあたしかに大仁田は大学生だが・・・。
 その後しばらく入国手段を調査していた彼。「大仁田が国連機に乗れたんならオレだって乗れるはずだ。大仁田はなんの手続きをしたんだ?」と悩んでいる。そんな彼が大仁田厚は 国会議員だということに気付いたのは大分あとになってからだったという。「そうか。じゃあオレも国会議員になればいいんだ」と思ったらしいが、名前を知ってる政党が自民党とスポーツ平和党とジョルト党だけだという彼が当選できるほど国会議事堂はオープンではない。
 その後もなかなかアフガン行きをあきらめきれない様子の彼だったが、「未撤去の対人地雷が一千万個以上」「山賊が横行していて中心地以外はボディーガードなしでは歩けない」「宿泊施設は全て政府関係者やジャーナリストで満室」「電気が通っていないため夕方を過ぎると完全な闇」などという情報を入手した後、 急速におとなしくなっていった。もちろん彼の言っていた、
「別に地雷とか山賊なんか怖くないけどさー、オレって寒いの苦手なんだよねー。」
という言葉は強がり以外のなにものでもない。
 地雷も山賊も暗いのも怖い上に寒いのも苦手な彼がたとえ国会議員だったとしてもアフガニスタンには行けないであろう。

 アフガン行きをあきらめた彼が次に目をつけたのは、パキスタンであった。なぜアフガニスタンの次はパキスタンなのか聞いてみたところ、
「だって同じ『スタン』どうしじゃん」
という答えが返って来た。たしかにアフガニスタンとパキスタンっていつもセットのような気がするけどな・・・。ただ、事実パキスタンは同時多発テロ以前までタリバン政権を支持しており、アフガン情勢を体感するにはふさわしい場所かもしれない。すぐさまインド大使館に電話をかける彼。
「すいません、ちょっとお聞きしたいんですけど、インドとパキスタンの国境って越えられますか?」
「うーん、今インド人に確認してみたんだけど、陸路も空路も封鎖されてるみたいだねー。一日おきに情勢が変わってるからもしかしたら通れるようになるかもしれないけどねー。」
「そうですか・・・。」
 昨年末のインド国会襲撃事件以来、両国間の情勢には緊張が高まっている。さすがに戦争寸前の国の間を行き来するのは無理だろう。
 ただ、「インド人に確認してみたんだけど」ということがなんの説得力ももたないどころか インド人が通れないって言ったんならむしろ通れる可能正が高いということをこの時の彼はまだ知らない。

 そして・・・





「じゃ、インドにしよーっと。タージマハル見たかったしな。」





 ・・・。








↓ある多感な少年の心の変遷:









「戦争の本質を見にアフガンへ行く」



          ↓



「タージマハルを見にインドへ行く」

















これぞまさしくインドマジック!!








だいたい、インド大使館に電話をかけ、「インドとパキスタンの国境越えられますか」と訊ねている時点で既にインドには行こうとしているのである。











↓彼の感覚に直接呼びかける声:


インドの大地「おいでおいで」
ガンガー「おいでおいで」                 ※ガンガー=ガンジス河
インドの人々「おいでおいで」
インドの動物達「モオーッ、ワン、ヒヒーン、パオーン、メエーッ、ガオーッ!」











そこからの彼の行動は早かった。
すぐさまネットで見つけた旅行会社に電話をかけ、

「一番早くていつチケットとれますか!」

そこから3日後の出発が決定。
素早い行動だ!すばらしい!普通なかなかそんなに早く行動に移せないぞ。
出発日は2月1日。1月中に出発していればもっと安かったのに、一日決断が遅れたために3千円も余計に払う羽目になってしまうところが彼の人生を象徴しているようだ。
すぐに本屋に行って「地球の歩き方・インド」を手に入れた彼。
パラパラっとページをめくって一言。








「えっ!?インドってビザいるの??っていうかビザってなに?


















さあ出発は3日後だ!

しーらね。しーらね。








ユニバーサルスタジオハリウッドではしゃぐ作者(写真左)。









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