〜中国の誤ち〜 「論語」の中で、孔子は語っている。 『過ちて改めざる、これを過ちと謂(い)う。』 自分の日常を省みて、非常に考えさせられる格言である。 誰にでも、過ちはある。人間であるからには完璧でい続けることなど不可能だ。しかし、間違えてしまったことに対してどう対処するか、それをどのように改めるかが大切なことなのである。誤りを改めず、間違いを正さずそのままにしておくということこそが、真に過ちと呼ぶべきものではないか。 孔子の生まれた国であるここ中国では、彼の教えをみなが大事に守り、儒教の誕生から2500年が経過した現在、町は実に多くの間違いに溢れている。現代の中国人は、過ちを改めるのではなく、過っていても特に気にしない、というかむしろ間違っていないことにしてしまうという、孔子のありがたい言葉を完全無視した豪快な過ちぶりを見せてくれているのである。 今回は、中国の街角で目にしたいくつかの過ちを指摘、いや、というか単なる間違い探しではあるが、このどうも納得がいかない感じをみなさんにも見ていただき、共有できたらと思う。そして中国人を見習い、昨日のことなんかにくよくよしないで笑顔で生きていってほしいと思う。小さくても、かけがえのない命なのだから。 では、順番に見ていこうではないか。
言いたい事はわかる。少林レストラン、つまり「SHAOLIN RESTAURANT」としたかったのであろう。「TESTUTONT」……、まあなんとなく「RESTAURANT」の名残りは残っているような気はしないでもない。 だがそれにしても間違えすぎである。もしかして、間違いではなく「R」のパネルの在庫が切れていただけなのだろうか?? で「T」がたくさん余ってたから代わりに使ってるとか。そんなわけねーだろ。 しかし中国人の凄いところは、これだけのスペルミスがあるにも関わらず看板を完成させてしまっているということだ。見ろこの大地に根を下ろした看板の直立ぶり。なんの恥ずかしげも無く堂々と立っているではないか。 まだ手書きの看板とかならわからんでもない。彼らにとって英語は母国語ではないのだから、綴りを勘違いしたまま間違って書いてしまうこともあるだろう。 だが、この看板はどう見てもキチンとした業者に発注して作ったものではないか。デザインを決めてそのデザインにOKを出して下書きをして木を彫って色を塗って看板に取り付けて完成させて運搬して設置するまでに、誰か1人でも「なんかおかしくないこれ?」と思わなかったのだろうか。 難しい単語ではない。レストランである。こんなもんネイティブスピーカーの知り合いがいなくても、近所の中学生に聞けばすぐ間違いがわかるだろうがっ!!!!! ……さて、もうひとつ同様に看板の過ちである。 江蘇省丹陽市、呉の武将孫堅の墓近くで見かけた山鷹眼鏡さんの看板 やはり英語に注目してもらいたい。 「山鷹」という部分は「SHANYING」である。スペースがひとつ空いていることからもわかると思うが、最初のGまで、「SHANYING」で「山鷹」のアルファベット読みだ。 ということは、後半部分、「眼鏡」が「LASSESG」になっているのである。 眼鏡を英語で何というか、賢明で聡明な読者諸君ならもちろんご存知であろう。グラッシーズ、GLASSESである。 LASSESG……。Gが極端に控えめな位置に移動している。 しかし、この間違え方も納得がいかない。普通うろ覚えという理由で間違えるとしたら、ブラッシーズとかグルッシーズとか、発音がグラッシーズに近い言葉になるんじゃなかろうか? LASSESGをそのまま発音すると、ラッシーズグである。こんな間違え方があるか?? LASSESGのG以外、「LASSES」の部分はちゃんと綴りがあっているということは、デザインの時点で製作者はちゃんと辞書で綴りを調べたはずなのである。それなのに間違っているのだ。 次は、雲南省は麗江にほど近い白沙村というところの土産物屋の看板である。 ↓拡大 「Welcome! Embroidered Art」 の日本語訳が、 「縫取りをした布絵にいらっしゃいませ」 …………。 翻訳サイトか? おそらく「Embroidered Art」というのを日本語に訳すと「縫取りをした布絵」になるのだろう。「Welcome」も「いらっしゃいませ」であっている。それぞれはあっているのだが、しかしその2つを足して出来た日本語は間違っている。がんばってはいるが、Exciteの翻訳といい勝負の直訳っぷりである。 だが、この土産物屋の店員さんのことはオレは褒めてあげたい。だって、ちゃんと自分で勉強して手書きで看板を描いているのだから。一生懸命さと大胆さが同居しており、非常に好感が持てる。間違ってもいいから堂々と、というのはたしかに語学学習の基本である。そう考えると、ここの大将は基本をキチンと踏襲している意欲的な生徒である。 とはいえ、間違っているにしては堂々としすぎという気もするが……。 逆に好感が持てないのは、以下のように完全に投げやりになっている日本語である。
ところどころ簡体字(簡略化された漢字)になっているのはいいとして。 美術監督――武重洋二 音楽――――久石譲 主題歌―――「せつは何度」 主題歌。せつは何度。 千と千尋の神隠しの主題歌は、「いつも何度でも」だ。「いつも何度でも」が「せつは何度」。せつが誰なのかはわからないが、おそらく何度注意しても言うことをきかないやんちゃな子供なのだろう。 いやいや、まあこれくらいは軽いジャブである。 このDVDの真骨頂は、主題歌やスタッフの部分ではなく、下方の注意書きの部分にあった。 うーむ。 一応、注意書きの3行について、上から順番に一行ずつ見ていこうではないか。 まずは大文字で書かれているところ。 「DTS音響の再生にはDTS對のDVDブレーセそ、DTSデコーダーガ必要チま。」 …………。 わかる。言いたいことはわかるぞ。 そうだ。DTS音響の再生には、DTS対応のDVDプレーヤーと、DTSデコーダーが必要なんだ。「です」が「チま」になっているだけなのだ。「デ」と「チ」、「す」と「ま」は似ているし、文章全体もそれなりに意味は通っている。よし。いいよ。オレはおまえを許すよ。 ではその次の行を見てみよう。 「DVDムヲ才ほ映像と音響ぞ高密度ね記録しそのせしカソネめす。」 …………。 うん……、伝わってる。気持ちは伝わっているよ。 そうだ。DVDビデオは、映像と音響を高密度で記録し、そのせしカソネめすものなんだ。……最後でちょっと心が折れているような気がしないでもないが、いや、それでも大丈夫。おおらかな心で見れば、「ムヲ才」は「ビデオ」と読めるじゃないか。諦めちゃダメだ。がんばれ、まだまだキミの想いは伝わっているぞ。 そして最後、一番下だ。 「DVDのもはひた對ののひつちゅゅも再生かたちそぬしは。」 …………。 完全に投げ出しやがったなテメーおい!!!!!!! コラっ!!! 男ならちゃんと最後まで諦めずにやり切れよっ!!!!! そしてこれを販売してる会社、売り出すなっっ!!!!!!!! もはや「DVD」と「再生」の2単語しか理解できる部分は無い。真ん中の部分などは、「のひつちゅゅも」だ。ゅゅである。どう発音すればいいんだ。 この注意書きは、どう考えても注意書きの意味を成していない。この文章を読んでいったい何を注意すればいいのか。おまえの翻訳能力を最も注意したい。 だいたいこんな結果になっているのなら、最初からわざわざ日本語で書こうとする必要が無い。日本語に訳したのに日本人は誰も理解できていないのだから。これを無駄な努力といわずして何といおうか。はっきり言って、普通に中国語で書いてあった方がまだ日本人が読んで理解できたのではないだろうか。 だいたい、ちゃんと3つめでオチがついているところが小憎たらしい。もしかして、ホームページでつっこまれることも織り込み済みなのだろうか。 さて。 旅も終盤、オレは北京のCDショップを訪ねた。北京は首都であり、数年後にはオリンピックを控えた大都市である。中国は田舎こそまだ黄河文明がそのまま続いている古代文明の世界だが、北京や上海といった政府直轄地だけ見れば、先進国であると言い切れるくらい近代化の嵐が吹き荒んでいる。 おっ
中国では長距離バスの中でビデオ上映が行われることが多いのだが、移動中アンディラウ主演の映画を何本も観せられたおかげで、オレもいつの間にやら立派なアンディファンになってしまったのだ。CDの裏側を見ると、血液型や生年月日などのアンディプロフィールが書かれている。ファンであればチェック必須の情報だ。 なるほど。 アンディラウはAB型だそうだ。それから…… ちいさっっっ!!!!!!!!!! 身長2cmもなかったんですかアンディ・ラウって!!!! 親指アンディかよっっっ!!!!!!!!!! 身長1.74センチメートル。テレビの中で見るアンディはもちろん立派な大人の体型をしていたのだが、あれはもしかして共演者も全員1.7cmくらいの身長だから立派に見えたのだろうか。中国の芸能界は、不思議の国のアリスやガリバー旅行記的な小さな世界になっているのだろうか。 中国の歌謡界、芸能界の超大物アンディ・ラウともあろう者が身長1.74cm。これじゃあ、ミニモニに加入してもいちばん小さいじゃねーか!!! それどころか、コンサートの途中で辻希美にすら踏み潰されそうだ。 せっかくファンになったのに、まさかアンディが手乗りサイズだったとは……。体重はちゃんと人並みにあるのに……。 その後、しばらく飲茶を楽しみ周りの中国人と談笑しながら休憩し、アンディショックから立ち直ったオレは、今度は日本のドラマのDVDコーナーを見に行くことにした。わが母国を離れてはや1年、帰国が迫っているとはいえ日本のテレビドラマのパッケージを見ると非常に懐かしい気分になる。 あ! 江角マキコだ!! おしいっ(号泣)!!! シムニョ(涙)。 中国の人たち、 製品化する前に、1回わかる人に確認するといいと思うよ。 |