〜香格里拉(シャングリラ)〜





 麗江の宿には、生意気な猫がいた。オレは猫は好きだが、生意気な猫は嫌いである。こやつがどう生意気かということを具体的に述べると、なんとなくオレを見る目つきが生意気なのだ。はっきり言って、
カリスマ旅行者を尊敬しようとする誠意が全く感じられない。その上、カリスマに会うというのにヒゲや体毛の手入れもしておらずモジャモジャとだらしない。
 これは、おしおきをすべきだろう。
 なんだって? ネコ林寺
ネコ林寺拳法を習得した本物の中国猫に、映画「キャッツアイ」で稲森いずみや内田有紀が扮したコスプレの猫にすらメロメロになった貧弱なおまえがかなうわけないって?
 ……甘いな。
認識が甘すぎるぜ。そうやってあんたみたいな甘っちょろい人間が必要以上に怖がって放任してしまうから、奴等だってつけ上がり特攻服を着てなめ猫ブームなんか起こしやがるんじゃないか。

 それではこのカリスマをナメきったなめ猫に、スパルタ指導員としてどのように挑めばよいのか。
 ふふふ……。

 
オレにはこれがあるんや!!!!




 
伝家の宝刀、日本製極上霜降りまたたびや!!!!

 というわけで、夏真っ盛りなこの雲南の8月中旬、カリスマを尊敬しない生意気ななめ猫にはここでまたたびを投入することにした。
 ほらほら、こっちを見ろよなめ猫。見〜つめるキャッツァイ♪ な〜んやらやら♪ 
つ〜きあかり浴びて〜〜ええ〜♪(なめ猫のテーマ)


 
そりゃーーっ!!





































 
あ〜〜っはっはっはっ!!!

 
バカめ。所詮インテリを気取っていても、野生の本能は隠せまいて……。どうあがいてもネコはネコ。このヒューマン・ビーイングのカリがスマートなカリスマのオレに楯突こうなど100年早いのである。愚かものめ……、こんな1本の木の枝で酩酊して自分を見失ってしまうなんて、おまえたちがアヘン戦争で嫌というほど思い知った麻薬の恐ろしさを忘れてしまったようだな。
 またたびに魅了されてしまった悲しいなめ猫は、あまりの興奮でそのまま鬼籍と中華鍋に入り、自然な流れで
豆板醤でピリ辛に炒められ、宿泊者がシェアする宿の夕食のテーブルに並んでいた。

 ……さて。遊んでる場合じゃないな。

 麗江から次に目指すのは、北の都市・香格里拉である。大きな目標は四川省の成都なのだが、中国はあまりにも広すぎるため、ここから日数を重ね四つの町を経由してチンタラと成都まで移動せねばならないのだ。本来は麗江から東に向かいバスと電車を駆使してまる2日かけて成都へ向かう方法が一般的なのだが、そんな無茶な移動は体に良くない。これからは、なによりも体に優しい旅を心がけることにしたのだ。だって、
もうオレ一人の体じゃないんだから。オレの中には明治時代の無垢な女学生、花言葉に詳しいストロベリーメリージェーンちゃん(18)が住んでいるのだから。なに? そんな話もう忘れた? 思い出せっっ!!! ……でも、オレ1人の体じゃないからといって、僕はまだ誰のものでもないの。みんなに権利があるの。だから安心して!
 北のルートをとると毎日動いて最短でも4日はかかるが、全て日中のバスの移動のため体への負担は少ないのだ。何しろ毎日体を洗ってベッドで寝られるのである。オレって、こういうところが妙に堅実なんだよね。物事を堅実に考えていく傾向があるの。
加入している保険だってアリコの「てごろでがっちり入院保険」だから。やっぱり体のことを考えるともしもの時のためにがっちりと心強い備えが重要なんだよね。ただ、保険内容はがっちりで心強くても、アリコの親会社がリーマンショックでいきなり破たんしかかるというがっちりしてない心弱い展開になって、しばらくニュースを読むたび青ざめてたけど。

 それではそろそろ出発である。
 麗江の「汽車站」と書いてチーチョージャン=バスターミナルの待合室でバスを待っていると、傍にいた白人の旅行者のおばさんがペラペラっと話しかけて来た。



「エクスキューズミー、ねえあなた、私8:30発のバスのチケットを持っているの。でもそこの係員にチケットを見せても、まだ乗り場に入れてくれないの。どうして? ちょっと係員に聞いてくれない?」


「ああどうもどうも。どうしてと言われても、
そんなこと僕がわかるわけないでしょっ! どうしてそれを僕に聞くんですかっ!!」


「あら、あなた中国人じゃないの? じゃあもしかして中国語は喋れないの?」


「一切喋れません。だいたい、中国人とは顔が全然違うじゃないですかっ!! あなただって、僕の顔が他の人々と全然違ってインテリ風だから、英語を話せそうだと判断して話しかけたんでしょう!!」


「そうなの。インテリ風でカリスマだったから話しかけたの」


「詳しくはわからないですけど、まだ8時前だからじゃないですかね。僕が今まで他の街で乗ったバスも、30分前になるまで乗車口に入れなかったですから」


「そうなの? じゃあきっとそれね!」


「ほんじゃ人助けをして喜ばれたところで、僕のバスはそろそろ出るみたいなんで、お先に失礼します」



 ……ということで、もはや田舎町に向かう路線のため座席も少なくオンボロなマイクロバスに乗り、土埃にまみれながら4時間半で香格里拉へ到着。
 この町では1泊だけして明日の朝また北上するため、到着した汽車站(チーチョージャン=バスターミナル)でそのまま明日のバスのチケットを買うことにした。筆談で次の町「郷城」までの一人席を購入して帰ろうとすると、隣の窓口の客がオレを呼んでいる。またも白人旅行者、男2人、女1人の3人組だ。



「ちょっとあんた、切符買いたいんだけど言葉が通じないんだよ。助けてくれないか?」


「助けたいのはやまやまですが、僕も中国語喋れないんですけどいいですかね。筆談でチケット買うぐらいならなんとかしてあげますが」


「なに、喋れないのか!?」


「アイ アム ジャパニーズ!!! アイ アム チョーノ!!!! ガッデムてめー東洋人だったら誰でも彼でも中国語喋ると思うなよエーコラァッ!!!」


「ジャパニーズか。明日オレたちは郷城に行きたいんだけどな、バスは1日1本しかないのか聞いてくれよ」


「聞くまでもなく1日1本だ。朝6時に出発する1本しかないのである」


「それじゃあ、ノンスモーキングのバスが出ていないかどうかも聞いてくれないか?」


「はいはいそれじゃあ、有没有禁煙車? と書いて……これを係りの人に見せれば……って
あるわけねーだろっ!!! 1日1本しかバスがないのにどこをどう考えたら禁煙車があると思うんだよっっ!!!」


「なに、そうか。わかったよ」



 なんだこの中国まで旅をしに来ているのに自分の世界を崩さない奴らは。この身勝手で常識外れの考え方は……、ユダヤ人じゃないかこいつら? ※たまたま過去に遭遇したユダヤ人の印象が悪かっただけで、ほとんどのユダヤ人の人たちはきっととても常識のあるいい人だとは思います(うまいフォロー)
 そもそも、白人旅行者にとって中国人と日本人の区別というのはそんなにつき難いものなのだろうか?? い〜や、
いくらなんでもわかるだろう。たしかにオレは昨日床屋に行ったから、今の髪型は頭のてっぺんだけ毛があってそこから三つ編みが1本だけ伸びてるいわゆる辮髪(べんぱつ)で、更に目も細くなってナマズのようなひげを生やして額には「中」の文字が書かれているけど、それでもいくらなんでも中国人と間違えることはないだろう。こんなに嵐のショーにそっくりな中国人がいるかってんだよ(え? そんな話忘れた?)!

 ところで、「香格里拉」というこの都市名は、読み方が「シャングリラ」である。なんでも「桃源郷」という意味の伝説の地名をそのままつけているらしいが、なんというか、
ヘソで茶を沸かすんだっつーの。何が桃源郷だっつーの。別に景色も大して良くねーしさー、相変わらずトイレはドアが無いしさー。本物の桃源郷だったらトイレぐらい個室だっつーの!!!!
 まあしかし昼メシの水餃子などはこのように大変美味しい。





 午後は香格里拉では一応有名らしい、チベットのポタラ宮にくりそつだという松賛林寺というチベット仏教の寺院を観光した。そこで寺を回り仏教に帰依する修行僧の皆様を見ていると、なんだかオレも、非常におごそかでつつましい心持ちになったのです。……これからは、
煩悩を全て捨てて旅をして行きましょう。食べ物もわずかばかりの、一汁一菜があれば十分でございます。おやつなどめっそうもありません。チョコレートなど俗人の口にするものです。人との争いなど恥ずべきことでございます。許しです。これから出会う、全てのことを許します。
 公共汽車(ゴンゴンチーチョー=市内バス)に乗って町に戻り、おごそかな気持ちで瞑目・合掌しながら、オレはこのようなスーパーマーケットに入った。





 ……それでは、本日の一汁一切の夕げはなににいたしましょうか。決して贅沢はしません。つつましく召し上がります。



 
おおっ!!! これは美味そうだっ!!!




 クリスプチョコレート。
バヅル&マヨネーズソース○マリ。
 いや、正直なところ「バヅル」が仮に「バジル」の間違いだとしても、バジル&マヨネーズソースはこの商品にかかっていないだろう。そんなものチョコレートにかけられてたまるかっ。多分その部分の表示は、これを作った中国人が日本製の他の食品についていた表示をそのままパクってつけてしまったのだと思われる。
おそらく「絶品のうまさ! やめられないとまらない!」みたいな意味の表示だと思ったのだろう。
 それはともかく、チョココーティングを施したクッキーに、クリスピーなナッツがたっぷりと乗せられたこの魅惑的なおやつ。……
これを買わずに何を買えというんだっ!!! 一汁一菜のつつましい暮らしを送ろうとしているからといって、クリスプチョコレートを見逃すほどオレは落ちぶれちゃいないんだよっ!!! 見損なうなテメエっっ!!!

 オレは喜び勇んでクリスプチョコレートと菓子パンと魚肉ソーセージとお茶を抱きかかえ、ルンルン気分でレジへ向かった。……今日だけです。
今日だけおやつを食べるのです。明日からは一汁一菜、つつましく争いをせず全てのことを許す生活を送るのです。



「レジのおばさん、これくださいな」


「アイヤー。ピッ、ピッ、ピッ……、あれ? これは……あやー?」



 レジ係のおばさんはセンサーでそれぞれの食料のバーコードをピッピッと読み込んで行ったのだが、なぜか肝心のクリスプチョコレートがうまく読み込めないようだ。どういうことだろう。魚肉ソーセージも菓子パンもペットボトルのお茶も、全て平らではないイヤらしい形なのにすんなり読み取れているのだ。なのにひとつだけ直方体で歪みの無いクリスプチョコレート、本来の2次元の形をきっちりと保っているバーコードが読み取れないとはおかしな話ではないか。
 だが、おばさんが何度繰り返してもセンサーは反応していない。ねえ頼みますよ。そこがレジ係の腕の見せどころじゃないですか。このトラブルをどう切り抜けるかが、あなたの昇給にも大きくかかわって来るんですから。



「支配人〜! ちょっとレジまで来て〜!」


「アイアイサ〜どうした小姐〜」


「このお菓子がうまくレジを通らないのよ。どうしてかしら」


「どれ。貸してみろ。スカッ。スカッ。……アレ。ほんとだなあ。スカッ。ダメだなぁ。スカッ。通らないなあ」



 レジ係おばさんと上役おじさんは、2人してクリスプチョコレートを手にああでもないこうでもないとセンサーにかざし行ったり来たりさせている。ちょっとっ、そのお菓子はオレの物になるんだから、そんなに無茶な格好させないでよ。あんまり激しい動きを加えると、クリスピーがパラパラとこぼれ落ちてしまうでしょっ! あなたたちと違って繊細に出来てるんだからクリスプチョコレートは!



「あのーおふたりさん、お客の僕がずっと待ってるんですけどね。一般的にそういう場合は諦めて手入力で金額を打ち込みませんか? 知ってるんですよ僕そういう仕組み。独身男子はスーパーマーケットで買い物をする機会が多いんですから」


「ウェイ、ちょっと待つのだ」



 すると支配人はレジから出たと思ったらチョコレートが陳列されていた棚まで行き何やら観察し、次に裏の事務所に引っ込んだと思ったらしばらくのちに出てきてレジに舞い戻った。そして、レジ係おばさんと何やらオレに理解出来ない謎の言葉(レジ語?)で話している。
 話が一段落つくと、今度はおばさんがオレに身振り手振りを交えてペラペラと訴えて来た。なんだろう? 集中して聞いてみようか。



「なになに? クリスプチョコレートはレジに置いて? 菓子パンと魚肉ソーセージとお茶、今日はこれだけ買って、帰りなさい? なるほど〜そうですか。今日はチョコレートは諦めてそれ以外のものだけ買えばいいんですね。
って待たんかい。そんなもので納得するわけないでしょうが。オレにとってクリスプチョコレートは魚肉ソーセージと同じくらい、いやそれ以上に大切なんだ。買って帰るぞ! よこせってんだ!!」


「わからない子だねえ。今日はダメなの。買えないの」



 おーい、何言ってるんだこの人! 買えないって、そんなわけないだろ! だって、ちゃんと商品棚に陳列されていたクッキーなんだぞ? 決して陳列前の業務用ワゴンからこっそり抜いて来たんじゃない。そんなマナー違反はしていないよ。オレだって客としての立場はわきまえているんだよ。それを踏まえてこのクリスプチョコレート、これはたしかに商品として棚に並べられていたもので、ということは即ち、当たり前のことだがそれは客が買う権利のあるお菓子だということじゃないか。それなのに
「これはまだ売れない、魚肉ソーセージとお茶だけ持って帰れ」とは何事だ。あんたのレジ係としてのプライドはそんなもんなのかよ。レジ係に、誇りを持っているんじゃなかったのかよ!



「すみませんけどねおばさん、僕は納得出来ませんね。このチョコレートクッキーは誰が陳列したんですか? 僕ですか?? 
違うでしょう。あなたがたじゃないですか。スーパーマーケットに陳列されているクリスプチョコレートを手に取ってレジに持って来た、それは客として当然の行為でしょう。仮にこれが店員さんが個人的に自宅から持ってきた、プライベートで購入したおやつだというのなら買えないのは納得します。あなたには引き渡しを拒否する権利がある。でもそうじゃない。僕は何一つルール違反は犯していない。無理に値切ったりしているわけでもない。ただスーパーマーケットの棚にあった商品を定価で購入しようとしているだけじゃないですか。どうしてその純粋な行為を否定されなくてはいけないんですか」


「とにかくダメと言ったらダメなの! 明日には買えるかもしれないから、また明日来なさい! 来明天!」


「イヤだっ!!! オレは今買いたいんだ!!!」




 オレが強気に出るとおばさんはさも面倒くさそうな表情になったが、口頭で状況を説明したところで言葉の壁のせいでオレが理解出来ないとわかっているため、彼女は小さな紙を取り出して何やら漢字を書き出した。イマイチ読めないが、どうやら「『銭』に関するなにかが今は無い。だから買えない」というようなことが書かれているようだ。定価がいくらだという情報が無い、つまり値段がわからないから売れない、ということなのだろうか?



「おばさん違うんだ。オレはね、
『なんで買えないか』とか、そういうことを聞いてるんじゃないんだよ。別に理由なんかどうだっていいんだよ。それは重要なことじゃない。そうじゃなくて、どんな訳があろうと、スーパーマーケットで陳列されているチョコレートを買えないのは納得出来ないと言ってるんだよ。そうでしょう? 僕が間違ったことを言っていますか? もし間違っているんなら教えてくださいよ。でも、誰が聞いたって僕の言い分は正しいでしょう? とにかく、売りなさいよ。金は払うんだから。ほら、見てオレの財布の中。ちゃんと十分な金額が入ってるでしょ?」


「しつこいなああんたっ!! いい加減にしておくれ!!」


「それはこっちのセリフなんだよっ!!! そっちこそいい加減にしてくれよ!!!」




 まったく……、なんて物わかりの悪い店員なんだ。自分の非を一切認めないつもりか??
 オレだって、こんなところでゴネて無駄に時間を費やしたくないよ! 早く帰りたいんだ。ただ、まだこれがな、ごく普通のクッキーだとか、チョコレートコーティングだけでナッツのふりかかっていない、凹凸のないチョコレートクッキーだったらオレも引き下がってもいいよ。でもな、
これはクリスプチョコレートなんだよ!! チョコレートコーティングの上にナッツが散りばめられているんだっ!! 写真だけ見ても激しく食欲をそそられるだろうがっっ!!! チョコレートの甘い口溶けとナッツの歯ごたえが抜群の相性を見せる、こんなに洗練されたおやつとして相応しいお菓子を買う気まんまんでレジまで持って来て、もう脳の中では自分が食べているシーンも想像して甘い脳内になっているのに今さら置いて帰るなんてそんなことが出切るかっっっ!!!! お菓子好きをナメんじゃねーぞテメエっっ!!!! チョコレートクッキーのひとつも満足に売れないくせに、なにがシャングリラだっっ!!!!

 レジおばさんは、
「なんなのよこの駄々をこねる大人はっ。『一汁一菜、争いをせず全てのことを許す生活を送るのです』なんて言ってたくせにたかがクッキー1箱にこれだけ固執するってバカじゃないのっ」という軽蔑の表情でオレを見ている。
 ああそうだよ。
全てのことを許すよ。でもなあ、ひとつだけ教えておいてやるよ。「全てのことを許す」というその「全てのこと」の中に、クリスプチョコレートは入ってないんだよっっ!!!! オレが許すのは、クリスプチョコレート以外の全てのことだっっ!!!!



「おばさん何度も言うけどね、オレはもう今日クリスプチョコレートを食べるって決めてるの。だからこれを買うまでは帰らないの。売ってくれって言ってるでしょ」


「まったくあきれかえったもんだこいつは……。支配人! 支配人ちょっと!!」


「アイアイサ〜どうした小姐〜」


「このガキが帰らないのよっ!! もういいでしょ、だいたいこういう製品は5元くらいよね! 他のクッキーもそのくらいでしょ!? もう5元で売っちゃいましょうよ!」


「しょうがないな。じゃあ5元で計算してやりなさい」


「そうするわ。そうしないと何時間でも居座るつもりだわこいつ」



 …………。
遂に勝負はついた。
 結局根負けしたおばさんの
「5元でしょ、5元にしとこうよもう!」という適当な提案によって価格は5元と決まり、ようやく!! オレは夢のクリスプチョコレートをゲットできたのである!!!

 ある意味、このレジ係とのやり取りは、
平成の日中戦争と表現してもよかったかもしれない。日本代表のオレが中国の不条理に対して戦いを挑み、見事に不正を打ち破ったのである! このように、納得いかないこと、追及すべきところに出くわしたら、人は誰でも自分の名誉をかけて強気で追及せねばならぬのだ。弱腰外交を繰り返す日本の外務省ならびに総理閣僚にもこの姿勢を大いに見習ってもらいたい。なんなら、オレ自身が入閣して日本外交の改革にひと役買ってもいいと思っている。

 オレはスーパーのビニール袋をふりふり勝ち誇って宿に帰り、部屋に入ると早速箱を開けてお茶とともにクリスピークッキーを味わおうと準備に取り掛かった。箱の中は丁寧に個別包装になっていたので、パッケージのギザギザのところをピリリっと裂いて中身を取り出す。

 あっ?













 
クリスピーが無い……。






 次の袋を開けても、次の袋を開けても、
一粒のクリスピーすら見当たらない。

 …………。

 騙された。
 
パッケージ写真に騙された(号泣)。
 
どうしてだっっ!!! 商品名だって「クリスピーチョコレート」になってるじゃないかよっっ!!! なんでクリスピーチョコレートにクリスピーが乗ってないんだっ!!!! じゃあ名前の「クリスプ」の部分はいったい何を表してるんだよっっっ(涙)!!!! あんなに苦労して買ったのにっっ(号泣)!!!!


 こうしてガッカリしながら食べたただのチョコレートクッキーは、全然美味くなかった。





今日のおすすめ本は、三国志マンガの王道といえばこれ 三国志 (1) (潮漫画文庫)






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