〜麗江1〜





↓雲南民族村にて。「天上的西藏」なる歌のロックバージョンを若干ヤケ気味に歌う人。なんで奥に隠れるんですか。



 昨夜はまたメニューのない食堂で中国語会話に挑戦したのだが、「白いご飯」を頼んだら、ラーメンが出てきた。なぜだ……そんなにオレの発音が悪いというのか……(涙)。白いご飯とラーメンって読み方似てるの? しろいごはん、しろいごはん、しらいごはん、しらーごはん、らーごはん、らーはん、らーへん、らーめん……。
おおっっ!!
 しかし、「頼みたかったのは米飯なんですよね〜」と筆談で主張してみると、奉公人のにいさんは「なんだそっちかい! じゃあ取り替えてやるよ! まあ気にしないアルよ!」となんと無償交換してくれた。やはり、どうも雲南省の中国人は優しい。入国前は、きっと中国に入ったら最初に出会う中国人に
「日本鬼子!!」と叫ばれて青龍刀で切りつけられてダルマにされ、土産物屋の奥の暗い所に置かれるんじゃないかと恐れおののいていたのだが、それは圧倒的な偏見だったということに気付かされた。

 それにしても、「中国では2本足のものは親以外、4本足のものは椅子以外なんでも食べる」と言われており、
実際に人肉やダンボールや農薬を肉まんに入れて売ったりしているようだが(昔「八仙飯店之人肉饅頭」という映画があったんです)、その格言の通りこの国の人々の食へのこだわりというか調理センスというのは天才的だと思う。
 数日前は、食堂で店主の言葉が理解出来ず「すいません中国語わからないんです……」と呟いたところ、「ええい面倒だ、こっちにきて食材を選びやがれっ!!」と厨房の棚に連れて行かれ、「じゃ、じゃあこれとそれとあれで適当にお願いします」とジェスチャーで訴えたところ、「よーしわかった!! 待ってろ!! ザクッザクッザクッザクッ 
ゴーーーージャーーー! ジャージャー!! ガゴンガゴンガゴン(鍋を振る音)!! ほら食えっ!!!」とあっと言う間に出来上がったのがこれら。




 またこれが美味いのなんの。客が気分で選んだ食材を即座に余すことなく使って、ベスト・オブ・ベストの料理を作ってしまうというこの技術と感性。中国人の方々はこんな至高の特技がありながら、歴史上ではイナゴの襲来で飢饉になってたりしてるからよくわからない。たとえ農作物をイナゴに食い荒らされたって、「よっしゃ! こりゃイナゴの豊作だ! 
ザクッザクッザクッザクッ ゴーーーージャーーー! ジャージャー!! ガゴンガゴンガゴン(鍋を振る音)!!!」とイナゴを使ったあらゆる料理が食卓に並びそうじゃないか。それとも、2本足のものは親以外、4本足のものは椅子以外、6本足のものはイナゴ以外をなんでも食べるのだろうか中国人は。

 突然だけど、「中国料理には段ボールとか農薬が入っていて……」と考えていたら、ショートコントを思いついた。

ショートコント「チャイナフリー」

日本のレストランにて
「うわっ、なんかこの餃子苦いっ!! もしかして農薬が入ってるんじゃないのっ!? だからチャイナフリーの食材にしてくれって言っただろう!!」


「安心して下さい。餃子はもちろん、この農薬も中国産ではありません。
ちゃんと国産の農薬を使っています


「な〜んだ、それなら安心。っていいかげんにせんか〜い! ルネッサーンス!」



ショートコント「チャイナフリー」その2


「うわっ、なんだこの肉まん!! ダンボールが入ってるぞ!!! だからチャイナフリーの食材にしてくれって言っただろう!!」


「安心して下さい。この段ボールは中国製ではありません。
ちゃんと国産の段ボールを使っています


「あれま、そうどすか〜。それは失礼、ごめんなさい、ってお〜ま〜え〜は〜ア〜ホ〜か〜〜(のこぎりをポイ〜ンポイ〜ンと叩きながら)♪」



ショートコント終わり


 ……それはそうと、
上の口の話が出たらやっぱり今度は下の口である。
 昆明を出る日の朝、例の共同トイレに行ってみると、便器の後ろ側の
床の上に先人の出した大きなものが転がっており、アツアツなことを証明する元気な湯気がホンワカと立ち上っていた。

 おまえな〜〜(涙)。
いったいどういう狙い方をしたらこの広い便器から外れて床の上に着地するんだよっっ(号泣)!!! 馬鹿者っっ!!!
 たしかにな、これは「トイレでショックを受けた国ツートップ」の片割れのエチオピアでは
よく見た光景だよ。でもあの国は便器が無くて小さな穴が空いてるだけだったんだよ。それに比べて、ここには和式便器(と同じ形のもの)があるじゃねーか。これだけの広い標的があってミスるとは何事だっっ!!! 前後にも左右にも十分な動きしろがあるだろうがっっ!!! これだけ広けりゃ座頭市でも便器内にしっかり収めて用を足せるんだよっっ!!!!

 ……しかし。これはひょっとして、どちらかというと中国人ではなく旅行者のものだったりするのではないだろうか? オレは日本を背負って立つ者として諸外国から投げかけられたこの難題から逃げてはいけないと、塊の前で便所の床にどっかと座り、自分でなんとか○んちをひねり出そうと集中を始めた。深呼吸して……精神統一して……。
 ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク…………、
チーン! ひらめいた!! この床に転がる粗相(そそう)の謎が解けたぞ!
 ……え? 何をやっているんだって? そりゃあ、謎を解くために
とんちをひねり出していたんだよ。決まってるじゃないか。なんだと思ってたのあんた?
 さて、一見してこの黒塊、単純に色から判断すると白人のものではないような気がしてしまうが(だって白くないから)、それは
アリバイ工作である。今回の猟奇事件の鍵を握るのは、この「ニーハオトイレ」と呼ばれる中国の便所のシステムそして、和式便器に慣れていない欧米諸国のバックパッカーなのだ!
 まず、中国人ならば慣れきった自国のトイレで今さら標的を外すことは考えにくい。だから、この事件では現地の人々は容疑者リストから外してよい。今回の不祥事は、中国のトイレのスタイルに不慣れな、すなわち排便シーンを他人から見られることを恥ずかしいと思う人間が起こしたものだ。そいつは人目を避けようと、しゃがみながらどんどん後ろに下がり(前方にドアがないため)、さらに日本人などアジア人は和式便器の感覚でどこまで下がるとはみ出るかということは体でわかっているが、洋式便器しか使っていない犯人の尻は、恥ずかしさと和式便器のサイズへの無知により、便器の後方限界点を通り過ぎてしまったのである!! 
つまり、犯人は白人旅行者だ!! 我々は、狡猾な真犯人によって見事にスケープゴートとして利用されてしまったのである!!!

 …………。

 
どうでもいいんだよそんなこと。

 それにしても、トイレに壮大な苦労がある国って旅するのが激烈に辛いんだよな……。だって1日中、移動や食事や観光やデートやキスの時でも「ああ宿に帰ってからトイレ行くのイヤだな〜(涙)。明日の朝もトイレ行くのイヤだな〜〜(号泣)」という気持ちが常に頭の片隅に残るのだ。その国から出るまで、一時たりとも完全な精神のリラックス状態にはトイレのせいでなれないのである。このトイレじゃあ、
小野妹子も随分苦労させられたはずだぜ。隋から帰国して聖徳太子に報告した内容は、ほとんど「いや〜、中国のトイレってマジ最悪でしたわ。だってドアが無いんすよ? それに紙で尻拭いたらゴミ箱に捨てるんですよっ!! しかもちゃんと畳まないもんだから茶色いのが見えてもうおげれつ極まりないのなんのって! 信じられないっしょ!! 妹子かなしいっ!!」みたいなものだったに違いない。小野妹子が最も伝えたかったことはそれだったはずだ。しかしそれではあまりにも品格が無いということで、推古天皇に上げる前にトイレの話は聖徳太子判断で報告書からもみ消されたのではないだろうか。
 ただ、小野妹子といえばよく女性に間違われる紛らわしい名前のため、実際中国で
女のフリをして女子トイレに入ってしまえば、男子トイレから一転してそこにはまさにめくるめく下半身の夢想郷が……
 オレもこれを機に、
中国にいる間は女装に目覚めようかな。でもトイレではお互いにあそこを晒すわけだから、モロにバレるか……。

 さて、昆明から電車に乗って6時間で雲南省の都市、大理へ。初めて乗った中国の電車だが、これも切符は筆談ですんなり買えたし、車内でカップラーメンを食べる乗客が少々珍しかったくらいで、どうも人々のマナーも良く気分を害するようなことは一切なく、逆に拍子抜けするくらいであった。
 なにしろ入国前に経験者の話を聞いた限りでは、中国で電車に乗ればそれは現地人との戦いの連続、終点までに
5,6人は走る快速電車から蹴落とし泣き叫ぶ赤子は踏み潰し、こっちも腕の1本や2本と100万円くらいは無くなっている覚悟で臨まなければならないという印象だった。それがまさかこんなに大人しく、1滴の血も見ずに運行を済ませようとは。……多分、やっこさん(車掌)もオレの姿を見つけて他の乗客に騒がないように指示を出したんだろうな。なにしろオレは、見た感じ将来三国志の遺跡を巡る中国旅行記を出版しそうな顔をしてるからな。本の中で悪いことを書かれないように用心してるんだろ? おーしわかった。じゃあその気持ちを汲んでやろうじゃないか。三国志本は、最初から最後まで中国を誉めちぎる本にしてやるからな。オレは一度受けた恩は忘れない人間だから。まかせとけって! ※約束通りこんな本書いたよ!

 大理は、雲南省ペー族自治省の都市であり、大理石の産地としても有名である。って地球の歩き方に書いてある。大理石は、大理でとれるから大理石というんだね。今初めて知った。でもそりゃあ大理石だから大理で取れるよね。他の石だって、トルコで取れるからトルコ石。御影地方で取れるから御影石。蒋介石や新井白石も全部同じだ。
 ちなみに日本には、このペー族出身のタレントがいることをご存知だろうか? ほら、有名人の誕生日を完璧に覚えていて、所構わず写真を取りまくるピンクの人。わかるでしょ? 
みなまで言わないけど。言っちゃうと寒いギャグだということが確定してしまうから。あとは皆さんの頭の中で完結して下さいね。

 これは大理古城の路上で二胡のパフォーマンスをしていた女学生だ。学費が足りないので助けて下さいというメモ書きが地面に置かれている。



 なんとも、路上で小銭を稼がなければいけないほどの少女が、よそ見をしながら平然とこれだけのものを見せているというところが中国人の恐ろしい可能性を表しているような気がしてうすら寒くなってくる。
 とはいえ、最後には僕はスタンディングオベーションしました。ほら、取っておきな。1000万。いや、遠慮することないんだよ。そんな立派な演奏を聞かせてもらったんだから。無事学校を卒業したら、
オレと組んで男女2楽坊として活動しようじゃないか。オレの担当はハミングね。あなたくらいの可愛さだったら、人生というステージも共に歩んでもいいよ。オレ、待ってるから。

 大理の街を一通り観光した後は長距離バスで移動、やや北上し梨ばっかり食べているナシ族の町・麗江へ。麗江の旧市街は少数民族であるナシ族の独創性のある町並みということで、世界遺産になっている。
 旧市街に一歩入ると右に左に曲がる細い石畳の道が続き、その両側を木造家屋が隙間なく埋めている。この古風で風情ある景色、麗江の旧市街はもう目的も無くただ町を歩いているだけで、身も心もウキウキしてくる。これは大げさではなく、事実だ。でも、オレが書くことを求められているのは世界遺産やウキウキする風景の描写ではなく
腹痛お漏らし下痢詐欺高熱日記だというのも事実だ。オレが風情ある景色をうまく文章で描写しても、どうせ読み飛ばされるんだから(涙)。
 ということで麗江には、街から離れた小さな村に、ガイドブックに載っていないもうひとつの怪しい名所がある。その村には、怪しげな漢方薬を使って世の中のあらゆる病気を治療してしまうというスーパードクターが住んでいるらしいのだ。
 中国の片田舎に住んでいる凄腕の名医・ブラックジャック。やはり医師免許は持っていないらしい。じゃ、世界遺産は置いといてそっちに行ってみよーっと。どうせオレなんかお漏らし下痢詐欺しか期待されてないんだから。「エロ変態」という持病も名医に治してもらおうっと……


これが麗江の旧市街でおわす





今日のおすすめ本は、面白いと言うよりは 作家になるのに文章の上手さは関係ないと教えてくれる衝撃作(レビュー参照) リアル鬼ごっこ (幻冬舎文庫)






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