〜アフリカのバス〜





 盗難事件の翌日、オレはジンバブエの首都ハラレへ向かっていた。とにかく大きな街にいかなければトラベラーズチェックの再発行の手続きも出来ない。幸いなことに、ガイドブックにはハラレは相当大きな街だと書いてある。書いてある以上は、多分ハラレは
スイカップなみに大きい街なのだろう。
 オレはバスの運転手の真後ろの席に一人で座っていた。気分は昨日よりも楽である。なぜならば若干所持金に余裕ができたからだ。


ほわんほわんほわん・・・・(昨日の夜・宿へ場面転換)


コンコン


「はーい、誰でっか?」


作「あの、作者でございます。」


「おお、今日はホンマ災難でしたね。どうしました?」


作「滝口さん・・・。実はこの私、不肖作者めは、昨日お会いしたばかりで大変失礼極まりないということは重々承知の上ながらも、本日滝口さんにお願いがありまして参上つかまつった次第でございます・・・(涙)。」


「な、なんですの?そんなかしこまらんと遠慮せずいうてくださいよ。」


作「そうですか。
金貸してください!!


「変わり身早いですね・・・。なんだ、そんなことですか。いくらいりますか?」


作「いいんですか!!!!!すいません〜、ありがとうございます!!!!」 ガバッ
(デパート夏物語風おじぎ)


「そんな恐縮せんでください、困った時はお互い様やないですか。おい、作者さんにいくらか貸してやって。」


「はーい。じゃあとりあえず100ドルでいいですか?」


作「100ドル!!やった!
マンモスうれピー!!大金だ〜〜〜〜(号泣)」


「100ドルくらいでそんな・・・しかもネタが古い・・・。」


作「おありがとうございます。おありがとうございます・・・。」



ほわんほわんほわん・・・・(今日のバスへ場面転換)


 というわけで、手持ちはUSドル換算で大体150ドルくらいになった。ジンバブエの物価の安さなら、これでもしばらくはやっていける。

 ところで、今までエアコン付き、ドリンク付きの南アフリカの豪華バスに乗っていたのだが、ついにここに来てバスも完全にアフリカナイズされたようだ。オレのすぐ左側では、
走行中にバスのドアが何度も開き、そのたびに手前に座っている乗客のおっさんがわざわざ閉めにいっている。これはあぶない。多分このドアで今までに相当な数の通行人をなぎ倒しているだろう・・・。そういえば心なしかドアのへこみが人型になっているような・・・。ああ豪華バスよ何処に(涙)。
 まあもちろん運賃はバスのボロさに比例して下がっていっているので、今の時点では全財産はたいても
ヒマゴギャルですら援助交際してくれそうもない金持たずなオレにはこれでいい。

 荒地の中の未舗装道路をドアを開けたり閉めたりしながらしばらく走っていたバスが途中道端で停車すると、なにやらでかい袋を持ったおばちゃんが乗ってきた。なんか動いてるなーと思ったら、その麻袋からは
得体の知れないでっかい鳥のようなものが2つ顔を出していた。鳥というよりも見ようによってはミニ恐竜に見える。そしてなんか不気味にキーキー鳴いている。そしてなぜかその袋はオレに迫ってきた。



「にーちゃん。あんたの隣空いてるの?」


ぎゃーーーーーーっ!!ぎゃーーーーーーーーーーーっ!!!なんなのそれはっ!?それをオレに近づけないでくれっ!!!!空いてるけど!!ぎゃーーーーーーーーっ!!!!


「そうかい。じゃあこれあんたの隣に置かせてもらおうかね。」



しまった。最初から誰かの隣に座っとけばよかった!後悔する暇もなく、気がつくとオレの
目の前10cmをケッタイな鳥サウルスの頭2つが通り過ぎていく。



「ぎゃああああああああああっ!!!!!!!!」



 叫びつつ必死のフットワークでミニ恐竜をよけまくる。まさしく死に物狂いだ。大体なんでバスにそんなもの持ち込むんだよ!!っていうかこの生き物はなんだ!!!いやーっ!!目がくり抜かれる!!
 南アフリカで乗っていたバスの隣の席は白人のお姉さんだったが、今日はなんか
正体不明の生き物だ。しかも今にも袋から出ようとしている。

頼むから大人しくしててくれ・・・。








 赤い頭と青い頭。ジュラシックパークに住んでそうである。
 袋から出ようと中で暴れ周り、キーキーと怪鳥ならではのおたけびをあげている。
乗車マナーも何もあったもんじゃない。しかもしばらくしたら後ろに座っていたにいちゃんがやってきて、ミニ恐竜にビールを飲ませようとしている。鳥なんかと一緒に飲んで楽しいのか??それに鳥も囚われの身では酔っても愚痴ばかりだろう。もう何がなんだかわからん。

 とにかく怪鳥から距離を保つために思いっきり通路に半ケツを出し、2頭の怪鳥も酔いが回ったのかウトウトし始めようやく平穏が戻ったと思ったのも束の間、その次に乗ってきたおばちゃんも、何か
中でごそごそと音のする袋を持っていた。またもやオレのまん前に置かれたその袋からは、今度はヒナ鳥がいれかわり立ちかわり顔を出す。ジンバブエのバスは鳥づくしだ。

 鳥つながりなのかなんなのか知らないが、横でうたた寝していた怪鳥もまた金切り声をあげ始めた。なぜか怪鳥の飼い主もヒナ鳥の飼い主も
自分の鳥をオレに託してゆうゆうと後ろに座っている。
 前では何十匹もの若どりのから揚げの元がピヨピヨピヨピヨ言いつつ空気穴から順番に顔を出す。そしてオレはヒナの顔が出てくるたびに
ピンピンはじいて穴の中に戻す。ヒナたたきである。
 なんでバスの中で数十匹の鳥に囲まれこんなことをやっているのかという疑問はあるのだが、まあこれはこれでちょっと楽しい。

 ただ、ヒナたたきもしばらくはいい暇つぶしになるのだが、いかんせん何時間もやっていると飽きる。しかし困ったことに、構わずに放っておくと、時々思いっきり脱出を試みる暴れビナが現れ、仕方が無いので穴からヒナが飛び出るたびにオレがいちいち捕獲して袋の中にねじ込まないといけないのだ。

なぜオレが??

 ジンバブエのバスでは、鳥の面倒を見るのが義務付けられているのだろうか。本当なら食費の節約のためにこのまま2,3匹持って帰って
カラッと揚げたいところだが、オレのせいでジンバブエの人々が日本人に対してヘンなイメージを持つようになるのは避けたい。
 少なくとも、今このバスの中にいる人間から見たらオレは日本人の代表だ。勝手に人の鳥を持って帰ったり、怪鳥ごときにびびって悲鳴をあげたりなどという、
恥ずかしいマネは決してできないのである。オレは逃げ続けるヒナ鳥達にいい加減頭にきて握りつぶしそうになる度に、自分は日本代表であるということを思い出し、「まったく、困るなあ!ヤレヤレ」という包容力のある笑顔を作りながら袋の中に放り込んでいった。

 かれこれ30匹くらいは捕まえ、若干オレとヒナ達の間に友情すら芽生えそうになった頃、バスは首都であるハラレのバスターミナルに到着した。オレはすかさずタクシーを拾い、宿へ向かった。
 ハラレはジンバブエという国名からもたらされるイメージとはかなりかけ離れた都会である。しかし、アフリカの都市部の宿命、ここも夕方すぎると外を歩けない。ここで多いのは、いきなり石で頭を殴り荷物を盗っていくという石強盗だということだ。あいかわらず、アフリカの強盗はまだ人間に進化しきれていないらしい。せめて人を脅して金品を盗るという
強盗の基本プロセスくらいちゃんと学んでくれといいたい。
 ハラレには、「パームロック・ビラ」という日本人旅行者が溜まっている宿がある。オレは金の匂いを求めて日本人と情報交換をするためにそこへ泊まろうと思ったのだが、先の日食のために人が集まっているらしく、残念ながら一つのベッドも空いていない状態だった。仕方がないのでオレはそのすぐ隣に併設されている別の宿をとることにした。マトリックスを見に行ったら満員だったのでその向かいで
マゾリックスを見るようなもんである。
 明日は、トラベラーズチェックの発行元である2つの会社に電話をし、きっちりと再発行の手続きをとらなければならない。ジンバブエでは再発行が出来ないとは言わせねえ。逆にここでもちゃんと再発行してくれたら、オレはアメリカンエクスプレスのCMに
出てあげてもいい。ただしロケは次もオーストラリアでお願いね。
 とりあえず明日からのオレの動きでこれからの予定が来まる。次の国のビザもここでとらねばならないし、今頃息子は死んでるんじゃないかと気が気じゃないであろう親にも電話せねばならない。
 まあいざとなったら隣に金持ちの日本人がたくさんいるし、泥棒でもしよう。





今日の一冊は、

のぼうの城 下




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